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LOHASMEDICALVIEWの方が有権者の多数であり、もし一枚岩になったら政治は抵抗できません。国民皆保険制度は瓦解の瀬戸際なのです。健康な国民の納得感を取り戻すためにも、薬価や医療価格の全面的な見直しは待ったなしと言えるでしょう。 どういう説明なら健康な人が納得するか考えると、費用対効果に見合う価格だけ払う、これまでの薬や医療行為も高過ぎるなら、その水準まで引き下げる、という以外に選択肢はないはずです(安過ぎたものは値上げもあり得ます)。 12月20日には関係4閣僚が「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を取りまとめました。ただ、そこには「年4回薬価を見直す」とか「市場実勢価格を適時に薬価に反映し」とか、現在の薬価の決め方を前提にしたことしか書かれていません。肝心の費用対効果評価に関しては「本格的 オプジーボ(ニボルマブ)の薬価を巡る騒動の結果、既に少なくない薬が、その効果に対して費用が高過ぎて国民の許容限度を超え、若い健康な国民が「お互い様」と思えなくなりかけていることを書いてきました。 今のような国民皆保険制度は自分たちの時まで持続しないと見限った後も、若い人たちは大人しく保険料を払い続けるでしょうか? 健康な人に導入するため(中略)、実施のあり方を検討し、来年中に結論を得る」としか書かれておらず、これでは「抜本改革」の看板に偽りありです。 薬の開発は通常、病の原因となっている体内の分子を特定し、その分子に働きかけることのできる物質を見つけ、その物質を安定的に製造する方法の確立、動物で安全性と有効性を確認、そして最後に人で安全性と有効性を確かめる(臨床試験)というように段階を踏んで行われます。 この最後の臨床試験を担当するのは通常、製薬企業です。製薬業界の人たちが異口同音に言うのは、臨床試験にとてもお金がかかる上に、その成功確率がどんどん低くなっていることです。だからその分、薬の値段も高くならざるを得ないのだ、と。 それをウソと言うつもりは毛頭ありません。ただ、日本薬を、費用対効果に見合う金額でしか買わないと早く決めよ、と主張してきました。それに対してドラッグ・ラグの発生を心配する意見もあるかもしれませんが、短期間で見直さざるを得ない薬価制度にする方が危険です。さらに、もっと深刻な薬剤費高騰とドラッグ・ラグを招きそうな事態も進行中で、その対策へお金を回すためにも、早くしないといけません。本誌編集発行人 川口恭目先の小ガネをケチって公共財を売り渡す滅びの道オプジーボの光と影9価格より予見性が大事28