ロハス・メディカルvol.138(2017年3月号)

ロハス・メディカル2017年3月号です。リン酸探検隊は本丸の練り物に、体幹トレーニング、長生きを喜ぶ日本へ戻ろう、女性に増える糖尿病、摂るべし新鮮な魚油、主治医との話し方、抗生物質って何?、梅村聡と小松秀樹、都会の公園にも森林浴効果、点眼は間隔と順番が大事など。


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LOHASMEDICALVIEWいのでしょうか。 そう思って探すと、国内でもリン酸塩不使用で製造・販売されており、そのうち2社に話を聞きました。 信州ハムでは、1975年に発色剤・着色料・保存料・リン酸塩を使用しない「グリーンマーク」シリーズを開発。きっかけは「当時、食品添加物が社会問題」になり、「消費者団体より、添加物を使用しないハム・ソーセージの開発依頼があったこと」でした。 リン酸不使用のため、食感は「生肉を加熱した状態に近」く、当初は「出来上がりがパサパサ」でした。肉などの原料から製造まで試行錯誤の末、ようやく現在の商品に。 ただ「賞味期限は一般的な他の製品と比較して短く」、また「結着性が悪く、身割れなどで省く不良率も高く、全体として2割程度高価格」。発色剤・着色料不使用なので色も悪く、そのため当初は消費者に不評でした。それでも「食の安全性」へのこだわりを貫き、現在は多くの支持を得ているとのことです。 伊賀の里モクモク手づくりファームでは、1988年のハム工房創業と同時にリン酸塩無添加の商品を生産開始。「無21」シリーズとして現在に至ります。やはり「食感の弾力が苦労点」で、「噛むとブニョブニョ、ネチャッ、口の中でパサパサ」でした。「肉の温度が下がらないうちに」「高速で練り、手のひらで具合を決める」など、独自の技術改良を重ね、「熟成した豚肉が持つ結着力だけで、プリッとした食感」を実現。 同社製品は添加商品でも賞味期限は20日と短めですが、無添加だと「塩分がほんの少し高い」そうです。 実は、一般的なハム・ソーセージ類にリン酸塩が使われるようになった理由は、この「塩分」の問題。ざっと製造方法を見ておきましょう。 ハムは、豚肉を整形し、食塩や香辛料を加えて低温で漬け込み、その後、牛の腸や人工的に作られた膜に充填し、スモークハムであれば燻煙し、最後に茹でる(または蒸す)、というのが、古来からの基本的な作り方。ソーセージなら、挽肉に背脂を混ぜたものを使い、整形工程なしで、あとはハムとほぼ同様です。ベーコンもハムと製造方法は似ていますが、バラ肉などを使い、充填と茹でる工程はなく、必ず燻煙して作ります。 当然、リン酸塩は出てきません。今日リン酸塩に頼っている結着剤の役割は、昔ながらの製法では、食塩が担っていました。食感維持に食塩を多く必要としたため、かつては非常に塩辛いハムやソーセージも出回っていたようです。 伊賀の里モクモク手づくりファームのホームページでも、一般的にリン酸塩が使われ出した背景として、昭和30年以降、食生活の欧米化でハム・ソーセージの消費が高まる一方、減塩志向も強まったことを挙げています。減塩を達成しながら食感を保つための、安価で便利な救世主が、リン酸塩だったというわけです。 リン酸塩を使わず、なおかつ塩辛くないハム・ソーセージ類を作るには、屠殺後すぐ、まだ温かい豚肉を使用する必要があります。生産の管理が非常に大変で、コストもかさむので、製品の価格に跳ね返ってきても致し方ありません。 これに対し、通常のハム・ソーセージ類では、材料の漬け込みの際に、発色剤や保存料、着色料、そしてリン酸塩などを一緒に入れます。材料は冷凍の豚肉でも構わないのでコストも抑えられ、食塩をぎりぎりまで減らせます。 塩辛くないハム・ソーセージ類を手軽に食べられるのは、リン酸塩のおかげ。過剰摂取にならないよう、上手に献立に取り入れたいですね。4減塩の代償


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