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細胞にきちんと闘ってもらうためには、いくつかの条件を満たさなければなりません。 この連載では、身体の仕組みに存在する、相反する反応に着目することが多いのですが、免疫にも相反する反応があります。 異物に対して攻撃する際に働くアクセルばかりではなく、攻撃をやめる時に働くブレーキもあるのです。 よく考えてみると、免疫の学習では、攻撃することばかり教わり、どうなったら攻撃が終わるのかは、ほとんど話題にならないですよね。免疫の攻撃にはエネルギーが必要で、自分自身を傷つけることもありますから、アクセルがかけられっぱなしだと身体がもちません。ちゃんとブレーキ機能もあるのです。 このブレーキの部分が、今話題の「免疫チェックポイント」です。これまでのがん免疫療法は、どちらかというとアクセル部分を強めようとする試みが多かったのですが、今は、いかにブレーキをかけさせないか、という方に注目が集まっています。 キラーT細胞に付いているブレーキの一つがPD-1という分子です。がん細胞が、このPD-1とつながってしまうと、キラーT細胞ががん細胞を攻撃しなくなります。ちなみに、がん細胞側でつながる部分の分子をPD-L1と言います。 そこで、PD-1とPD-L1がつながってしまわないよう、間に割り込もうとするのが、「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる抗体です。現在では、PD-1とつながる抗体が2種類、薬として承認されていますが、がん細胞のPD-L1につながる抗体も開発中です。また、ブレーキとなる分子はPD-1だけでなく、他にもあることが分かっていますので、それらの分子とがん細胞がつながらないようにする新薬の開発も進んでいます。 こういった話は、一見難しく感じてしまう人が多いのですが、ご紹介する書籍だけでなく、日本癌学会の市民向け講座でも分かりやすく解説されています。同学会のウエブサイトで動画をアップしています(※)ので、ぜひご覧になってみてください。LOHASMEDICALVIEW毎回、本文と関係のある本をご紹介していきます。※第24回日本癌学会市民公開講座「がんを知り、がんを制する」講演3「がん免疫療法の最前線」玉田耕治(山口大学大学院医学系研究科免疫学分野教授)HTTP://WWW.JCA.GR.JP/PUBLIC/COURSE/24_YOKOHAMA.HTML桂義元著技術評論社2016年玉田耕治著羊土社2016年もっと知りたい方にやさしく学べるがん免疫療法のしくみ免疫はがんに何をしているのか?―見えてきた免疫のメカニズム―過去の特集はWEBで!!HTTP://LOHASMEDICAL.JP31©ロハスメディア2017(無断転載禁止)〒107-0062東京都港区南青山2-2-15ウイン青山616株式会社ロハスメディア内☎03-5771-0073【訂正】2016年12月号「血管を守る」シリーズ、2見開き目の図の矢印が、「低」から「高」へ向かっていましたが、「大」から「小」へ向かわなければなりませんでした。WEBの電子書籍では修正済みです。「ロハス・メディカル」編集部:ARTDIRECTION&DESIGN:HOSOYAMADADESIGNOFFICEPRINTEDINJAPAN株式会社テンプリントアクセルとブレーキブレーキを妨害