ロハス・メディカルvol.140(2017年5月号)

ロハス・メディカル2017年5月号です。「口から人生を豊かに」2回目は、お手入れの方法です。奈良夏樹氏voice。行動活性化療法。高齢者のポリファーマシー。梅村聡氏と井上清成氏の対談。新専門医って何?ほか。


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らもお叱りがありました。番組は謝罪文をウェブサイトに掲載すると共に、次の回の冒頭でも短く謝罪しました。一体何が、どのように問題であったのでしょうか。●薬はあらかじめ決められた病気に使います︱︱糖尿病のための薬を糖尿病の治療に使うように、睡眠薬は不眠症の患者に使うものです。番組で睡眠薬を処方された糖尿病患者は不眠の自覚はないと自身で話していました。であれば、そもそも処方してはならなかったはずです。●不眠を治すのに薬が最初ではありません︱︱ぐっすり眠圧が高い、血糖値をコントロールできないなどと、多くの人が悩んでいます。もっと効果的な治療法や薬があればという期待は高まるばかりです。それを表すように、健康番組の視聴率はとても良いそうです。 かねてから人気の高いNHKのテレビ番組が、最近、睡眠薬を使って深い睡眠を増やせば糖尿病患者の血糖値を下げられるかのような放送を行いました。私もたまたま見ていましたが、疑問や心配事だらけで、かなり戸惑いました。 放送後、多くの専門家や学会から批判が相次ぎ、当局か査と承認が必須です。さらに参加者に内容を丁寧に説明し、自身の意思でもって研究に参加する旨を書面で示していただく必要もあります。 睡眠薬を処方した医師の所属する大学のウェブサイトでは、研究倫理審査委員会で審査した研究の課題名と責任者名が公表されています。一見したところ、今回の実験の元と思われる課題は分かりませんでした。万一、こうした審査を経ず、参加同意の文書も得ていなかったとしたら、処罰の対象になるでしょう。●健康情報の発信側も受信側もリテラシーを保ちましょう︱︱命や健康に関わるわけですから、番組や専門家は正しい情報を適切に発信する責任があります。一方、情報を受ける側は何より〝批判的〟になってしかるべきです。 今回の一件から、法律、睡眠医学、研究倫理、リテラシーすべてに合点がいくことの大切さを学べます。第75回たかはし・まさや●1990年東京学芸大学教育学部卒業。以来、仕事のスケジュールと睡眠問題に関する研究に従事。2000年、米国ハーバード大学医学部留学。独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所産業疫学研究グループ部長高橋正也れないなど睡眠の問題には、いくつもの理由が複雑に絡んでいます。睡眠の専門家であれば、その背景を丹念に調べ、どこから、どのように対処していくかを患者と一緒に考え改善していくのが筋です。 もちろん薬による治療が必要な場合はあります。しかし、それよりも、働き方を見直し血たり、睡眠に対する考え方や行動を修正したりする方が望ましい例は多々あります。●ヒトを使う研究を行うには所属機関の研究倫理審査委員会による承認が必要です︱︱健康人であれ患者であれ、参加者を募って実験を行うには、その詳しい内容、参加者への危険性、不測の事態を防ぐ準備、薬を使うならば製薬会社との関係性などを事細かに書いた文書を研究倫理審査委員会に提出し、審査を受け、承認されなければならないというルールがあります。 番組でも、医師が睡眠薬を使うとすれば、そのような審30LOHASMEDICALVOICE


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