ロハス・メディカルvol.141(2017年6月号)

ロハス・メディカル2017年6月号です。「口から人生を豊かに」3回目は、歯痛の原因です。武井典子氏voice。新連載「健康情報しらべ隊」スタート。分煙では受動喫煙を防げない。梅村聡氏と井上清成氏の対談。記者が当事者になって気づいたことほか。


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 現在、日本高血圧学会のガイドラインでは、収縮期(上)血圧の降圧目標は、若者∼前期高齢者で140㎜HG未満、後期高齢者で150㎜HG未満となっています。でも、20年前の老人基本健診マニュアルで「要医療」は、上が180㎜G以上でした。 もちろん基準値が下がったのは、血圧を下げた方が大きな発作のリスクも下がるという試験結果が出たからです。ただ、基準値が下がれば、それだけ「高血圧患者」は増え、降圧剤を処方される人も増えます。その社会的コストの増大(製薬企業や医療業界にとっては売上増です)が、発作リスクの低下というメリットに見合っているのかは、これまで議論されてきませんでした。20年で30も厳しくLOHASMEDICALVIEWせん。実際、正常値と医療の対象となる異常値の線引き自体も、変更が繰り返されてきました(コラム)。 そのリスクを高めるものの多くは生活習慣です。生活習慣病と呼ぶくらいですから当たり前ですね。 ですから、もし高血圧と診断されても、数値を下げることばかりに囚われず、生活習慣全体を見直す良い機会、と捉える方が本質的。高リスク状態という現実をどうしたいか、そのためにどんな方法を選ぶか。医療や薬も、その手段の一つでしかないのです。 そういう意識を持たないまま、「とりあえず薬はちゃんと飲んでます」(暴飲暴食してるけど)(どんな薬かよく知らないけど)、なんていう人も珍しくないのでは? そうして少しずつ薬の量だけが増えていき、血圧は下がっても別の生活習慣病が進行していたり、副作用によるQOL低下が大きくても薬を飲み続けていたり、ということになりかねません。 もちろん、自分で考えるのは「難しそう」「面倒」とか、「考えたくない」といった理由から、医療にすべて「お任せ」にするのも選択肢の一つです。でも、丸投げでなく、どこまでプロに委ねるか、人は意外と日々の生活の中でも判断しているものです。 例えば髪型。頻繁に美容院に通う人もいれば、自分で切ったり結んだりして済ませる人もいます。美容師に細かく注文する人もいれば、やはり「お任せ」の人もいます。 家のメンテナンスも同じ。普段の掃除と整理整頓が徹底しているほど良い状態を保てますが、それでも年月と共に汚れたり傷んだりしてきます。掃除や片づけ、修繕ばかりに時間や労力を費やしていられませんし、古くなるほど素人ではどうにもならない事態も増えますから、やはりどこかでプロに頼むことになります。ただ、どの段階でどれだけ任せるのか、判断は人によって様々です。 いずれも個々の価値観や経済力、家庭の事情といった状況に合わせ、時にはプロの力を借りながら、継続的にある程度の状態に収めていく、という点は、生活習慣病への対応と同じです。生活習慣病にしかない判断材料としては、命に関わるかもしれないことや、費用を自分で全額払うのではなく税金など公費でも面倒を見てもらえることぐらいです。 というわけで、まず生活習慣を見直し、主体的に血圧コントロールに努める道を選択した場合、減塩は身近(簡単とは言いません)な手段の一つです。冒頭の「食塩はできるだけ減らした方が体に良い」の後ろには、こんな理屈が隠れていたんですね。 さて、せっかく理屈が分かったのに冷や水をかけるようですが、実は「減塩しても血圧が下がらない」人もいます。次回に続きます。「お任せ」でいいの?4


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