ロハス・メディカルvol.142(2017年7月号)

ロハス・メディカル2017年7月号です。「口から人生を豊かに」4回目は、喫煙の悪影響。加えて骨も弱くなるようです。品川女子学院の生徒さんたちによるvoice。梅村聡氏の対談相手は、江崎禎英・経産省ヘルスケア産業課長。保険医療に提供格差ほか。


>> P.21

梅村 そうです。江崎 また、2012年時点で日本には約460万人の認知症患者がいて、2025年には700万人に達すると言われています。慶応義塾大学の研究によれば、2014年時点で認知症に対する医療費は1・9兆円ですが、介護費用や家族の負担も含めたコストの総額は約14・5兆円と推計されています。認知症患者が700万人を超えると、社会コストは尋常でない規模になります。梅村 単純に掛け算するだけでも大変なことになりますね。江崎 現在行われている社会保障制度改革の議論は、満杯の客で沈みそうになっている豪華客船に、さらに多くの客をどう乗せるかという話に似ています。多くの問題が噴出する中で、座席が足りないとか、1人あたりのスペースが狭くなるとか、椅子やテーブルの並べ替えばかりを議論しているようなものです。椅子やテーブルをどう並べ替えようと、船が沈むことには変わりありません。必要なのは、どうやって乗船客を減らすかです。梅村 分かりやすいたとえですね。江崎 歳をとれば当然のように医療や介護のサービスに頼るのではなく、リタイアした後も社会との繋がりを持ち続けて自立した生活を送れる、そういう環境をどうやって整えるか、あらゆる観点から考えることが重要なのです。梅村 理想論としては、その通りですが、簡単ではないですよね。江崎 もちろん、お年寄りの方々に若い人と同じように働けというのは無理な話です。に10年近いギャップが生じていることです。40兆円を超える膨大な医療費の大半は、この期間に使われています。しかも、医科診療費の約3分の1は生活習慣病に費やされているのです。梅村 確かにそうなっていますね。江崎 今の日本の医療制度は、結核に代表される感染症から労働者を守り、経済成長を維持することを目的に整備されました。問題は、主たる疾患の性質が感染症から生活習慣病に変わっているにもかかわらず、医療制度はそのままになっていることです。この結果、健康管理に努めていようが、不摂生な生活をしていようが、病気になれば全く同じように医療費の給付が受けられるのです。ただ日本の年金制度は良く出来ていて、標準的な生活レベルの方を前提に計算してみると、リタイア時に数百万円程度の預貯金を持っていれば、100歳近くまで従来通りの生活水準を維持することが可能です。仮に預貯金が少なくても、月に2∼3万円程度稼ぐことができれば、十分生活を維持できます。むしろ徒いたずらに年金制度の不安を煽ることで掛金を払わない人の増えることが問題です。梅村 国からそういった具体的な情報提供はあまりないですね。江崎 特に、子育てを終えた高齢者にとって重要なのは、働いて収入を得ること以上に、社会的存在としての自分の居場所を確保し、社会の役に立っているという実感を持ち続けることだと言われています。介護施設で暮らす高齢者の多くが「何もさせてもらえない」という悩みを持ち、急速に認知症が進行してしまうというLOHASMEDICALVIEW高齢化は悪いことではない2周目の人生も緩やかに現役で老後の自立を整える21


<< | < | > | >>