ロハス・メディカルvol.142(2017年7月号)

ロハス・メディカル2017年7月号です。「口から人生を豊かに」4回目は、喫煙の悪影響。加えて骨も弱くなるようです。品川女子学院の生徒さんたちによるvoice。梅村聡氏の対談相手は、江崎禎英・経産省ヘルスケア産業課長。保険医療に提供格差ほか。


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LOHASMEDICALVIEW大きく超える水準になると言われています。消費税を8%から10%に引き上げるだけでも、あれだけ議論した挙句2年半先延ばししたばかりなのに、数年後に20%を超える消費税増税が受け容れられるとは思えません。そうすると欧州のように、一部の患者の保険適用を制限することになり、自動的に混合診療に移行せざるを得なくなります。梅村 それはそうかもしれません。江崎 医療機関では、3時間待ち3分診療と言われるように、患者が目の前に来た時だけしか診られず、次に病院に来るまでほとんどフォローができていません。本来、医療にとって「予防」は重要テーマなのですが、診療報酬が十分ではないこともあり、なかなか進まないのが実態です。梅村 そうですね。江崎 医師会の幹部の方々にお話をうかがってみると、現状の問題点については極めて正確に分析しておられます。ただ、全国の医療現場では日々の治療活動に精一杯で、現状をいかに維持するかに関心が向いてしまうため、どうしても当面の課題である椅子やテーブルの並べ替えの議論に終始してしまうともおっしゃっていました。梅村 そうなんですか。江崎 現在、医師会の先生方と議論しているのは、できるだけ早い段階から医療サービスを提供しようということで現状にもっと目を向ける必要があります。高齢者が緩やかに社会活動や経済活動に関わり続けられる環境が整えば、世代間負担論に終始する必要はなくなるのではないかと思っています。梅村 非常に面白い視点だと思います。ただ、医療業界とか個々の医療機関から見れば、そうした取り組みが進んだら、船に乗った人たちの面倒をみるという自分たちの仕事が減るのではないかと心配になるのではありませんか。江崎 確かにそうした議論はよく聞きます。しかし問題は、客が減るかどうかを心配しているうちに、船が沈んでしまう可能性があるということです。今後患者や要介護者が厚労省の想定通りに増え続け、これを現行の医療制度や介護制度のままで対応し、その追加費用をすべて消費税で賄うとした場合、消費税は20%をす。人は40歳を超えると何がしか健康上の問題が出てきます。しかし、法律で定められている特定健康診査は対象者の半分以下しか受診していません。仮にすべての未受診者が特定健診を受け、現状と同じ比率で有病者が見つかったと仮定すると、実に470万人近い方々が新たに病院に行かなければならないことになります。もちろん都会と田舎とでは状況が異なるという問題はあるにせよ、国全体で見たら、明らかに患者数は多過ぎる状況になります。梅村 医療サービスがなくなるのではないかという心配はないということですね。江崎 ただ、そのためには、医療関係者の方々にも仕事の仕方を改めていただく必要があります。従来の医療は、担当医師の1人完結型のサービスでした。チーム医療という言葉はありますが、あくまで医師とそれを支えるサポート体制の話です。また、大きな医療界から見ると仕事減るのが心配アートからサイエンスへ22


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