ロハス・メディカルvol.142(2017年7月号)

ロハス・メディカル2017年7月号です。「口から人生を豊かに」4回目は、喫煙の悪影響。加えて骨も弱くなるようです。品川女子学院の生徒さんたちによるvoice。梅村聡氏の対談相手は、江崎禎英・経産省ヘルスケア産業課長。保険医療に提供格差ほか。


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LOHASMEDICALVIEWの世界に、大学とかの酵母の技術とか知識とか、ああいうのが入ってきたことで、遥かに良くなったと言っていましたね。江崎 はい、分かります。梅村 これまで杜氏は、生涯酒造りに取り組んでもせいぜい40回か50回しか日本酒を造れなかったのですね。ところが今は1年間で2千例くらいの試行ができるそうです。やり方を工夫すれば2千どころか多分無尽蔵に試行できるのです。そうすると、今までの人が40回か50回やって、「俺の経験上は屋根を藁にして⋮⋮」とか言っていたものが、実は最善じゃありませんでしたね、ということが分かったりするのです。江崎 そうなるでしょうね。梅村 旧来の世界で生きてきて指導的立場になった方たちからしたら、正直ちょっと屈辱もあると思うんですよ。江崎 それはあると思います。梅村 職人さんだったら、そのプライドも大切にしてあげないといけない。だけど医療に関して言えば、人の命に関わることだから、国民とか受されていきません。ここに来てようやくがん登録制度が始まりましたが、これまでがんで亡くなった膨大な数の患者に対する治療とその結果に関する情報を蓄積する仕組みもなく、医療界全体で全く活かされてこなかった事実が、すべてを物語っていると思います。梅村 その通りかもしれません。江崎 医療のIT化とは、単にコンピュータや電子カルテが普及することではありません。医療に正しくITを組み込むことができれば、同時並行的に進む同じような治療の進行状況を複数の医師がシェアできるわけです。あれがダメならこれはどうかといった手探り型の対応ではなく、同時に進行する類似の患者に対する治療結果を比較衡量することで、治療と結果の相関性が高まります。サイエンスの絶対条件は「再現性」です。これまで一人ひとりの医師の技量に頼ってきた医療が、医療関係者が連携することで一つのシステムとして機能すれば、人類は新たなステージの医療を手にすることができると思っています。梅村 なるほど、そうですよね。似たような話がありまして、僕はこの間、日本酒の杜氏に話を聴いたんですよ。日本酒造り益者のことを考えて、そろそろそこを脱していかないといけないんじゃないかなと思いますね。それが、ヘルスケア産業ということの一つの概念になるのかなと思ったりもしました。江崎 そうですね。地域包括ケアの話が出ましたけれど、厚労省からゲタを預けられた自治体も実際のところ何をしたらよいのか分かっていません。その辺りも医療サービスを見直すきっかけになるのではないかと考えています。梅村 医療の実質をどこに置くかですよね。ちょっと違った話をしますと、僕はネット上にお墓を作ったらいいな、と思っているんですよ。江崎 バーチャルなお墓ですか?梅村 はい。ネット上のお墓に、生きている時のお祖父ちゃんの言葉とか映像とかこんなことをやったというのを全患者の人生こそ実質後世に胸張れる道か良い社会を次の世代へ24


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