ロハス・メディカルvol.142(2017年7月号)

ロハス・メディカル2017年7月号です。「口から人生を豊かに」4回目は、喫煙の悪影響。加えて骨も弱くなるようです。品川女子学院の生徒さんたちによるvoice。梅村聡氏の対談相手は、江崎禎英・経産省ヘルスケア産業課長。保険医療に提供格差ほか。


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LOHASMEDICALVIEWそれがお墓に行かない原因になっている場合も少なくないんです。江崎 おっしゃる通り。梅村 本来、何のために墓参りに行くかと言ったら、自分のルーツを知って、自分の生き方を見つめ直す、ご先祖様に対して感謝する。これが原点なわけでしょ。その原点を大事にするんだったら、ネットでもいいじゃないかと思うんです。もちろん、実際に墓へ行きたい人は行ったらいいんですよ。江崎 今のお話を聞いて、日本で初めてラジオで落語を流した話を思い出しました。梅村 どんな話ですか?江崎 昔、ある落語家がラジオで落語を流そうとした時、落語界の重鎮たちから大反対を受けたそうです。ラジオで落語が聴けるなら寄席に客が足を運ばなくなる、というのです。しかし、その落語家が破門を覚悟でゲリラ的にラジオで落語を流したら、翌日から寄席が満杯になったそうです。それまで落語を聴いたことのなかった人たちが、落語とはこんなに面白いものかと知り、本物を見たいと寄席に足を運んだそうです。梅村 なるほど。話を医療に戻しますと、医療も本来何のためにやっているのかという実質を見失ってはいけないと思うのです。大切なのは患者をどう健康にするかです。実質の方から考えたら、遠隔診療もそうだし、ITもそうだけど、患者のためにどう使うかを考えるべきです。医療界の重鎮が反対を続ければここ何年かは避けることができるかもしれませんけれど、いずれなくてはならないものになると思いますよ。だったらむしろ医師の視点でITをどう上手く使うか考えていく方が賢いですよね。江崎 同感です。梅村 こういう発想が、やはり医療界は弱いと思います。部入れておいて、IDを入れたら、お祖父ちゃんが子や孫たちに言いたかったことが見られる。「シンドイ時はこうしたらいい」とか、後生へのアドバイスなども入れておくのです。江崎 なるほど。梅村 でも、これ多分、仏教界とか旧来の宗教の人たちは邪道だと言うでしょう。「お墓に行って、お花を生けて掃除して、先祖との交流が深まるんだ」と。言いたいことは分かるんです。でも、ウチの子どもとか今の人からすると、医療に関して様々なステークホルダーが色々なことを主張されています。だけど今言っていることを、次の世代や次の次の世代に対しても同じように言えますかと訊かれたら、僕はなかなか難しいと思っているんですよ。江崎 我々には、次の世代に渡すこの社会をより良いものにしていく責任があると思っています。昔作られた制度のままでは対応できない問題があっても、その制度に関わっている人たちにとっては居心地が良いことは少なくありません。しかし、制度全体を外から見たら、危機的な状況にあることがよく見えます。まずは、人生90年時代になることを前提に、社会システムを直すと同時に、医療サービスの在り方が変わるべきだと思います。超高齢社会を素晴らしいものにするために、厚労省や医療界の皆さんと一緒に、新しい仕組みを作っていけたらいいなと思っています。制度の中は良くとも外から見れば危機的25


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