ロハス・メディカルvol.136(2017年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2017年1月号です。


>> P.25

麻疹は非常に感染力が強く、免疫がないと100%発症し、3割が肺炎などを併発します。予防手段はワクチン接種のみ。昔かかった人や1回接種の人も感染し、自覚のないまま周囲に拡げてしまう可能性があります。※国内由来の麻疹ウイルス感染が3年間確認されず、ウイルスの遺伝子解析で感染経路が確認されている国。第19回LOHASMEDICALVIEWこの夏、麻疹が流行しました。2015年にWHOから麻疹「排除国」※に認定されているのですが、国外から持ち込まれた時の危険性は、昔よりむしろ高まっているようです。専任編集委員(米ミシガン大学大学院環境学修士)堀米香奈子排除成功でも麻疹まだ怖いしていなかったので医師が疑いを持たなかったのでしょうし、初期には風邪との見分けもつきにくいのです」 麻疹は、免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症します。 通常、10∼12日間の潜伏期を経て、38℃前後の発熱や咳、鼻水などの症状が2∼4日続いた後、結膜炎のような目の症状や口の中の白い発疹が現れます。そこで熱はいったん引きますが、すぐまた高熱が回の流行では、8月末からの約1カ月だけで100人を超える患者が発生し、35人だった昨年合計の3倍に達しました。 「きっかけは7月末、インドネシアで感染した男性が、帰国玄関である関西国際空港に持ち込んだことと言われています」と話すのは、帝京大学大学院公衆衛生学研究科の高橋謙造准教授。「そこで感染した空港職員が8月初旬に受診した段階で診断がつかなかったため、より感染が拡大したと見られます。近年流行出て、全身に赤い発疹が拡がります。 症状を和らげる対症療法以外に特段の治療法はなく、3割もの人が別の病気も併発します。その約半数が肺炎で、まれに脳炎も見られ、二大死因となっています。特に大人が発症すると、重症化して深刻な合併症を併発する頻度が高い点、注意が必要です。 何とか治ったとしても、まだ安心できません。麻疹ウイルスが免疫記憶を担う白血球を殺してしまうため、2∼3年の間、肺炎など命に関わる感染症にかかるリスクが通常より高くなると、2015年に米プリンストン大学などのチームが発表しています。 麻疹ウイルスの感染力は非常に強く、1人の患者が平均12∼18人に感染を拡げます(この数を「基本再生産数」と言います)。流行性感冒と言われるインフルエンザですら、1人の患者から拡がるのは平均2∼3人ですから、飛び抜けています。くしゃみや咳などによる「飛沫感染」、今25命の危険も今回のお話は…免疫あるはずだが


<< | < | > | >>