ロハス・メディカルvol.138(2017年3月号)

ロハス・メディカル2017年3月号です。リン酸探検隊は本丸の練り物に、体幹トレーニング、長生きを喜ぶ日本へ戻ろう、女性に増える糖尿病、摂るべし新鮮な魚油、主治医との話し方、抗生物質って何?、梅村聡と小松秀樹、都会の公園にも森林浴効果、点眼は間隔と順番が大事など。


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 実は、「森林浴」という言葉は日本生まれ。1982年、林野庁長官による造語です。「燃料革命以降、国産の材木の消費・生産は減り続け、建材の多くが鉄筋に取って代わられた結果、放置され荒れた森林の利用を高めようとしたのです」と岩崎准教授。「まだ、確たる科学的裏付けはありませんでした」 さらに同庁は2003年、「医療・福祉分野において森林空間を利用した健康の維持・管理等を行う活動を、森林療法(フォレストセラピー)、その担い手となる人材を森林療法士(フォレストセラピスト)と呼称する」との方針を示しています。 なお、森林療法や園芸療法という言葉は、「病気を治療する」ものという誤解を与えがちですが、特定の疾病に西洋医療のような劇的効果を期待することはできないので、注意が必要です。 フィトンチッドは、樹種ごとに構成成分が違い、特有の香りがあります。ギリシア古語の「フィトン(植物)」と「チッド(殺す)」からの造語で、1930年頃には既に提唱されていました。樹木は、病虫害や他の植物などの攻撃や刺激から移動して逃れるのが困難なため、多様な効果のフィトンチッドを自ら生み出し身を守ってきたと考えられたのです。 とはいえ当時は、森林の放出成分を検出する機器がなく、「森の空気もビニール袋を持って走り回って採取したらしい」(岩崎准教授)とのこと。理論はともかく科学的な証明は不充分でした。日本発「森林浴」から「森林セラピー」へフィトンチッドとはLOHASMEDICALVIEWたとしています。樹林面積は減少しつつも、身近な緑は徐々に増えているのです。 隙間時間にちょっとだけオフィスを抜け出して、公園でのんびりすることで、健康維持につながり、かえって仕事の効率も改善するかもしれません。 「これまでの研究から、植物と関わることで、人間が元々持っている自然治癒力(回復力)を高めることができる、と説明できます」 神経系、免疫系、内分泌系のバランスの上に成り立っている体の恒常性は、 また、芝生地は癒しやリラックス感を与えて休息の場に向き、ラベンダー畑は花の美しさや香りの刺激から気分転換の場として評価できるなど、植物ごとに違った心理的効果も見られました。 どうやら、植物による健康効果は、フィトンチッドのみによるのではないらしく、身近な緑に接するだけでも生理的・心理的な健康効果が得られるというわけです。 例えば芝生などの緑地面積は、東京都内でも増えています。都はこれまで、海の森や都市公園の整備、校庭の芝生化などに取り組み、2007年度から2013年度までの7年間で、約625ヘクタール(東京ドーム約133個分)の新たな緑を創出してき日々のストレスによって脅かされます。植物との関わりはストレス緩和をもたらし、危機的状態からの回復を助ける、と岩崎教授は解説します。 「ヒトは地球上に誕生した頃、植物に囲まれて生きていました。その住環境をベースに体の恒常性維持機構も成立したのですから、現代人が植物と再び接することが自然治癒力を後押しするのは、ごく当たり前のこと。決して新しいことではないのです」回復力を高める29


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