ロハス・メディカルvol.110(2014年11月号)

『ロハス・メディカル』2014年11月号。寝たきり予防にフレイル予防、呼吸同期照射、交代勤務と睡眠、脂質を摂り過ぎると酸化、がんと慢性炎症の関係、即席ラーメンで女性はメタボ危機、アドバンス・ケア・プランニングほか


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第14回泌が抑えられ、脂肪が蓄積されにくくなる、というのが一般的に言われる糖質制限で痩せるメカニズムです。雑誌やインターネットなどには関連の情報が溢れ、内科医の私へも糖質制限に関する質問が頻繁に寄せられます。 まず、私の立場は、現代人の食生活を考えれば「糖質の摂り過ぎには注意すべき」という立場で、糖質制限は一定の範囲で有効だと考えています。しかし今、巷で流行って 「糖質制限して痩せる」ことが流行しています。肥満が様々な疾病リスクを上げるのは事実ですが、極端な食生活をしてでも痩せた方がメリットは大きいのか、巷ちまたに出回る流行の〝健康法〟を考える好例として私なりにお話ししたいと思います。 糖質を摂ると血糖値が上昇し、それを抑えるためにホルモンのインスリンが分泌されます。インスリンには余った糖質を中性脂肪に変える働きがあります。このため、糖質を制限するとインスリンの分いる過剰な「糖質制限」には三つの考えるべき論点があります。 一つ目は、栄養摂取のバランスがどうなのかという点です。近年は病気の大元になっている食事や運動などの生活習慣を改善することで、三大疾病を含む様々な病気を防いでいこうという考え方が主流になっています。人間が病気になっていく過程を川にたとえれば、個々の症状という〝下流〟や〝支流〟を掃除しても、生活習慣という〝上流〟を綺麗にしなければ意味がないということです。 糖質制限は、減量という〝下流〟の一つの目的のためだけに、栄養摂取という〝上流〟の全体的なバランスを欠くことになるので、「糖質制限」だけならば、私は賛成できません。また糖質を制限すれば肉などは好きなだけ食べてよいと言われていますけれども、偏っうめむら・さとし●内科医。前参院議員、元厚生労働大臣政務官。1975年、大阪府堺市生まれ。2001年、大阪大学医学部卒業。様々な偏った〝健康法〟が出ては消えていきます。健康は、楽しく充実した人生を送るための手段であって、目的ではありません。そこを間違えてマスコミ情報に振り回されないよう、学校教育や地域連携など社会全体で国民の健康リテラシーを向上させていく取り組みが必要だと思います。流行の〝健康法〟に気をつけて健康は良い人生のための手段三つの問題点LOHASMEDICALVIEWた食事は別の病気をひき起こしかねません。そのリスクが、まだ明らかになっていないのです。 二つ目に、世界全体の食糧事情から考えてどうなのかという点です。コメや小麦などの穀物が大量生産されているのは、肉や野菜を生産するよりも、少ない土地で大勢の人を養えるからです。世界中の人が糖質制限したら、食糧を生産するための資源が今以上に必要となります。これは医学的というより社会学的な論点です。LOHASMEDICAL


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