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LOHASMEDICALVIEWな、対話の場を持つことも必要になります。そしてこの対話は、一度きりではなく、継続して行っていく必要があります。なぜなら、私たちの意思(価値観)は、いつでも変わる可能性があるからです。「アドバンス・ケア・プランニング」が、時間軸を持った〝プロセス〟である所ゆえん以も、ここにあります。 「縁起でもない」 終末期医療や延命医療を考えたり話したりできない理由の一つはこれなのかもしれません。健康な若者にとっては、「もしもの時のこと」を「自分のこと」として考えられる人は、そう多くはないでしょう。しかしながら、若者であっても、意思決定の〝代理人〟になる可能性は少なからずあります。実際、自分の終末期について本人がしっかりと意思を表明しているような場合でも、代理決定者となる配偶者や子供たちがそれをどう受け止めるかによって、最終的な決定は変わる可能性があります。つまり、これらは高齢者だけに限った問題ではないのです。 亀田総合病院では、昨年、院内外の有志からなる「アドバンス・ケア・プランニング」啓発プロジェクトを立ち上げました。 アドバンス・ケア・プランニングを理解する、考える、行動することを目的として、院内や院外の医療関係者、地域の高齢者はもちろん、大学生など、これからの日本を支えることになる若者に対しても、ワークショップなど対話の場を設けています。 ワークショップの参加者からは「自分が決めたことは尊重してほしい」、「でも、大切な人が決めたことすべてを尊重できるかは分からない」、「元気な今のうちから、話し合っておこうと思う」などの声が聞かれています。いつ、誰が、考える?LOHASMEDICALVIEW 活動を行う上で、私たちが大切にしていることは、価値観の多様性に気づいてもらうこと、そして私たちを含め参加者各々がそれを尊重するような「場」を提供することです。 日本には「考えられない」「今は決めたくない」という「価値観」を持っている方も一定数います。そのような方々に対して、無理矢理「考えること」や「準備すること」そして「決定」を迫るべきではない、と私たちは考えています。 「決められない」「考えたくない」人に対しても、その心情を察したり慮おもんばかったりするような、日本人らしい細やかな心遣いを持って取り組みたいと思っています。多様な価値観を、各々が認め合い、もしもの時には助け合えるような準備をすること、地域の人々が「縁起でもない話」を「普通の(大切な)話」として、話し合えるような機会を作り、最期だけでなく「今」をより大切に生きるきっかけを作る、私たちはそう考えています。 超高齢化社会へと突き進む我が国において、終末期医療やアドバンス・ケア・プランニングに関する取り組みは、今後ますます重要性を増していきます。 シシリー・ソンダース女史の言葉にあるように、多くの人が、今をより大切にしながら、最期まで精いっぱい生きられるように、私たちはこれからもこの活動を続けていきます。あなたはあなたのままで大切なのです。あなたは人生最期の瞬間まで大切な人です。ですから私たちは、あなたが心から安らかに死を迎えられるだけでなく、最期まで精いっぱい生きられるように最善を尽くします。シシリー・ソンダース30LOHASMEDICAL