ロハス・メディカルvol.111(2014年12月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2014年12月号です。


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おおにし・むつこ●医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて基礎研究に従事。LOHASMEDICALVIEW 彼らはまず、アスパルテーム、スクラロース、サッカリンの人工甘味料3種類を、それぞれ水に混入し、同条件のマウスに与えました。11週後に、ブドウ糖負荷試験(ブドウ糖を溶かした水を与えて、血糖値がどのように推移するかを確認するテスト)を行ったところ、水あるいは砂糖水を飲んだマウスに比べ、人工甘味料を与えられていたマウスは血糖値が上昇しやすくなりました。特に、サッカリンを与えられたマウスの血糖値が顕著に上昇したため、以降の実験には、サッカリンが使われました。 人工甘味料それ自体は、人体において食品として認識されず、胃腸でも吸収されません。しかし腸を通過する際に、腸内細菌に変化が起こることは知られています。そこで彼らは、腸内細菌叢が、この血糖値上昇に関与しているという仮説を立て検討しました。 まず、抗生物質をマウスに与えて、腸内細菌の多くを根絶しました。その体内に、人工甘味料を摂取したマウスの糞便を移植しました。そのマウスは、予想通り、血糖値が上がりやすくなりました。 人間の場合はどうなのでしょうか? 糖尿病ではない381人の食事調査票を解析したところ、定期的に人工甘味料を多く摂取している人ほど、空腹時の高血糖、耐糖能異常を示すという結果になりました。 次に、普段は人工甘味料を摂取していない7人の健康な若者に、1週間、FDAが推奨する最大摂取量のサッカリンを摂取してもらい、継続的に血糖値のレベルをモニタリングしました。 その結果、7人のうち4人の血糖値が上昇し、腸内細菌の構成が変化したことも分かりました。そのうち2人の糞便を無菌マウスに移植すると、量や血糖値コントロールのために、カロリーゼロの人工甘味料を利用している方は多いと思います。でも、期待しているような効果が現れなかったり、逆効果だったりした経験はありませんか? 実は、人工甘味料を使っても思うように減量できない、血糖値コントロールできないという悩みを抱えている人は、世界中にたくさんいるのです。人工甘味料を使った飲料で2型糖尿病のリスクが上がるという論文も数多く出されています。 この一見不思議な現象の理由を解明するヒントになりそうな論文が、今年9月、『NATURE』に掲載され、米国で話題になりました。 イスラエル・ワイツマン科学研究所の研究者たちが、人工甘味料が腸内細菌に影響を与えることによって代謝異常を起こす、と報告したものです。減第27回人工甘味料は腸内細菌を変える?内科医(ボストン在住)大西睦子血糖値上がりやすくLOHASMEDICAL


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