ロハス・メディカルvol.111(2014年12月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2014年12月号です。


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LOHASMEDICALVIEW相対危険度は婿73、息子28、夫8・7、娘6・4、嫁4・7となります[図3]。 これで分かるように、介護者が男性か女性かによって、明らかに虐待の発生危険度が異なります。 実際の発生率を、ラフな計算ながら推計してみましょう。2012年4月の要支援・要介護認定者総数は533万人。これから、施設介護を受けている117万人を除くと416万人。前記国民生活基礎調査では、介護者に負担のかかる、介護時間が半日あるいはほとんど終日になるのは、在宅の要支援・要介護者の34・対策は自治体任せLOHASMEDICALVIEWで明らかな虐待事例を数例経験していますし、私が委員長を務める鴨川市虐待防止委員会に上がってくる高齢者虐待の事例も年によって違いはありますが、多くが息子による虐待です。 息子や夫が、娘や妻より悪いとして、取り締まりや処罰で対応しようとしても、事態は改善されません。善悪の問題としてではなく、生物学的条件として、それを前提に予防対策を立てるべきです。 そこに検診の仕組みを入れられないでしょうか。 自治体によって、虐待に対する取り組みは大きく異なります。家族による虐待という悲惨な問題を地域で扱うのは、やさしいことではありません。地域包括支援センターの力量、たぶん、指導者の個人的力量に大きく依存しています。 千葉県内で最もきちんと取り組んでいる松戸市や鴨川市では、高齢者人口当たりの虐待発生率は0・2%程度です。千葉県全体では0・1%と下がり、千葉県内の市町村によっては0という所もありますが、これは虐待発生が少ないということではなく、虐待から目を背けているために発生を把握できていない自治体が多いためと思われます。 自治体が取り組むきっかけとしても、虐待検診は有意義だと思うのです。 少なくとも、女性の心血管系イベントを予防するために高脂血症の検診を行って、女性には効果に疑問があるスタチンの投薬を続ける財源があるのなら、虐待検診を行う方が遥かに低コストで国民の社会的健康を維持できるのではないでしょうか。多死の時代の今こそ、身体的健康をめざして無益な努力をするのではなく、よく死ぬことをめざして社会的健康の維持にもう少しお金を使ってはどうでしょうか。8%でした。すなわち、半日、あるいは、ほとんど終日介護を受けている人は、計算上145万人になります。これに終日介護している担当者の比率の数字を組み合わせると、16万5千人程度の要介護者が息子によって半日以上の介護を受けています。これを虐待発生の母数と考えると、息子による介護では、年間4・3%程度に虐待が生じるという計算になります。 実際私の経験上も、息子が介護者のケース28LOHASMEDICAL[図3]続柄による虐待発生の相対危険度(妻を1として)01020304050607080(%)妻嫁娘夫その他息子婿虐待者


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