ロハス・メディカルvol.111(2014年12月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2014年12月号です。


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第15回基本である在宅では、家族による介護が、多かれ少なかれ必要になります。介護する家族が、精神的に追い込まれてうつ状態になったり、腰痛や睡眠不足などの肉体的負担を抱える危険は十分に考えられます。身内ゆえの複雑な感情から虐待に発展するケースも実際に頻発しています。家族介護は、国が言うほど生やさしいものではないことを理解しなければいけません。 国は、地域のNPOやボランティアも活用すると言いますが、NPOの事業内容や数 国は高齢社会への対応として、地域全体で高齢者を支えるという「地域包括ケア」を進めています。色々な説明がなされていますが、この政策の背景の一つには、国の財政難があります。保険料や税金のかかる病院のベッドや介護保険施設をこれ以上増やせないこと、人件費のかからない在宅に返したいことなどが背景として考えられ、日本の財政に余裕がある状態であれば、別の政策が選ばれた可能性は高いと思われます。 ですから、地域包括ケアのは地域によって違いますし、ボランティアに責任を持たせることは基本的にできません。要支援サービスが市町村事業に移行することになった今、市町村によるサービス格差もかなり出てくるでしょう。結局のところ、家族の力に頼らざるを得ないのが現実です。 既に現在でも、親など家族を介護するために仕事をやめている人は年間約10万人にも上り、年々増加しています。 しかし、現在の介護保険制度は、サービス事業者による要介護者への直接サービスの費用を支払うというのが基本になっています。たとえ家族が同じことをしても、お金が払われません。パートなどの短時間労働ができるうちはまだいいですが、24時間付き切りで介護をしなければいけない状態になると、多くの人は貯金を取り崩して生活することになります。生活費が底をつき、うめむら・さとし●内科医。前参院議員、元厚生労働大臣政務官。1975年、大阪府堺市生まれ。2001年、大阪大学医学部卒業。介護のために離職する人が年間約10万人います。中には、離職後に貯金を使い果たし、生活保護受給に至る場合もあります。今後増える要介護者を支えるには、介護をする家族の負担を減らすことが喫緊の課題です。私は介護保険サービスの中に、家族への現金給付を入れるべきだと考えています。家族による介護にも保険から現金給付を介護に対価を払うLOHASMEDICALVIEW生活保護を受けざるを得ない人も出てきています。 生活保護を受給できるなら、まだ救われます。2006年に京都で、介護による生活困窮から息子が認知症の母親と心中を図るという事件がありましたが、あの息子は働ける余裕があると見なされ受給すらできませんでした。最近では中高生が学校を休んで介護をしているという話も聞きます。「家族介護はタダ」という考え方が、新たな貧困を生30LOHASMEDICAL


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