ロハス・メディカルvol.112(2015年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年1月号です。


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しもやま・なおひと●1982年、千葉大学卒業。同麻酔学講座助手を務めた後、米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター緩和ケア科リサーチフェロー、米コーネル大学薬理学教室リサーチ・アソシエイト併任を経て帰国。国立がんセンター中央病院精神科医長、同手術部長、東京医科大学緩和医療部長・教授を歴任し、2013年より現職。せんし、我慢してはいけません。精神的な要素も加わり強まることがあるからです。  疼痛治療では、痛みの原因や程度に合った適切な薬を使うことが大事です。  がん自体が原因の場合、痛みの程度による薬の選択の指針が、WHOによって示されています[図]。  ポイントは、効き目の穏やかな薬からだんだんに強い薬に切り替えていくのでなく、痛みの強さに見合う薬を最初から使用する点です。医師に相談して「強めの医療用麻薬を使いましょう」といきなり言われたら、ちょっとためらうかもしれませんが、強い痛みがあるなら、それこそが正しい選択。むしろほっとしていいでしょう。      日本は疼痛治療に関しては後進国です。2007年施行のがん対策基本法に「疼痛等の緩和を目的とする医療が早期から適切に行われるように」と明記されて以降、やっと積極的になってきた状況で、代表的な医療用麻薬であるモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルの3つの強オピオイド鎮痛剤(コラム)でさえ、先進国としては最低レベルの使用量です。  背景にあるのは、「我慢は美徳」の国民性もさることながら、医療用麻薬への誤解やマイナスイメージと考えられます。  「1986年にWHO方式が示される以前には、モルヒネの大量投入による呼吸抑制(意識レベルが下がり呼吸回数が減る)がよく問題になり、末期患者にしか使われなかったことから、医療用麻薬は死期を早めるといった誤解が生今も残る誤解 モルヒネは、医療用麻薬でもあり、オピオイドという種類の薬でもあります。両者が混同して使われていますが、本来は別次元の分類です。 医療用麻薬は社会的影響などを考慮して「麻薬及び向精神薬取締法」に基づき「麻薬」に指定された薬であって、実は医学的分類ではありません。これに対しオピオイドは、神経にあるオピオイド受容体に取り付いて痛みを止めたり和らげたりする仕組みを持つ薬の総称です。 当然、医療用麻薬でないオピオイドも、オピオイドでない医療用麻薬も少数ながら存在しますが、モルヒネなど主要なオピオイドが「麻薬」に指定されているために、混同されがちなのです。オピオイド鎮痛剤って?下山直人まれました」と話すのは、東京慈恵会医科大学大学院の下山直人教授(緩和医療学)。同附属病院の緩和ケア室長も務めています。  「がんの専門医でも、医療用麻薬の使用に積極的でない人がまだいます。先日も、主治医に消炎鎮痛剤を処方されていた膵臓がんの患者さんが、強い痛みで眠れずに緩和ケア室を訪れました。モルヒネを処方したら、すぐに安眠できるようになりましたよ」 LOHASMEDICAL


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