ロハス・メディカルvol.112(2015年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年1月号です。


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LOHASMEDICALVIEW権力性の強い「地域医療ビジョンや医療計画」を策定し、市町村にそれを「踏まえた内容」の「地域包括ケア計画」を策定させ、そこに「消費税増収分の活用」によってもたらされる資金を投入して、民間の事業主体にも従わせることで、「他国のように病院などが公的所有であれば体系的にでき」たはずの「医療・介護提供者間のネットワーク化等の医療・介護の一体改革」を実現するということになります。 しかし、重要なのは、利用者側からみてサービスがうまく組み合わさった形で提供されることです。事業主体の統合と、サービスがうまく組み合わさることは別の問題です。医療、介護サービスをすべて国が提供すれば、サービスがうまく組み合わさるという訳ではありません。 しかも、地域包括ケアをめざすとすれば、ケアの目標が、患者の治癒から、利用者の生活の質の向上に広がります。生活ニーズは極めて多様です。それにうまく応えるには、提供者側が、それぞれの創意工夫でニーズへ接近していくように、競争環境を設定するしかありません。何がニーズを満足させるかを、マーケットではなく、国が決めるとすれば、サービスの進化は止まります。事業主体を統合し、統合した事業主体への統制を強める中央集権的アプローチは、ニーズへの接近を阻害します。 国は、国を頂点とするピラミッド型の階層構造によって、医療、介護サービスを統合しようとしています(図1)。しかし、利用者側からみてサービスがうまく組み合わさった形で提供されるために必要なのは、よりサービスの利用者側に近い部分での連携です。上意下達の階層構造は横方向の連携を阻害します。めざすべきはネットワーク構造による多元的アプローチです(図2)。矢印は始点側の意思に終点側の意思を従わせるというコミュニケーションの方向を示す。青色は権力的コミュニケーション、黄色は非権力的コミュニケーション。権威勾配が、上方向のコミュニケーションや当事者間の合意に基づく連携ルールの形成を阻害。権力的コミュニケーション非権力的コミュニケーション権威高国市市営事業所施設医療訪問看護訪問介護ケアマネジメント施設介護訪問診療施設医療生活相談民間事業主体民間事業主体利用者区町村都道府県都道府県低阻害阻害阻害図1階層構造による中央集権的アプローチ28LOHASMEDICAL


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