ロハス・メディカルvol.114(2015年3月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年3月号です。


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をどこまで速くできるか、加速した粒子同士をどれだけ高い頻度で衝突させられるか、です。要するに、どれだけ高性能の加速器を建設できるかがカギでした。 「発見」の舞台となったのは、スイスとフランスの国境地帯にある国際機関CERN(欧州原子核研究機構)の全長27㎞の巨大シンクロトロン「LHC」でした。現在、世界で最も性能の高いシンクロトロンと見なされています。前回も説明したように電源のノイズが低くなければ、そのような性能は得られません。 勘の良い方は既にお気づきでしょう。その電磁石電源の回路は、HIッグス粒子を覚えているでしょうか? 「発見」された時にはマスコミでも大きな話題になり、2013年のノーベル物理学賞が、その発見に対して与えられましたね。物理学の標準理論で、この宇宙の中に質量を与えているとされている素粒子ですが、標準理論で存在が予言された素粒子の中で最後まで見つからず、「神の粒子」とも呼ばれていました。 ただし今となれば、見つからなかった理由はシンプルで、観測できるだけの能力を持った施設が存在しなかっただけのことです。施設に要求される最も重要な「能力」は、粒子世界で初めて用いられた対称3線方式の電磁石電源は、そのノイズの低さでHIMACの優秀さに大いに貢献しました。そして対称3線の応用範囲は加速器の世界だけに留まらず、様々な業界のあり方を変えてしまう可能性を秘めています。ボーイング787から医療機器まで対称3線にすれば世界は変わる世界をリードするHIMACの重粒子線治療ヒMACが世界で初めて導入したのと同じ「対称3線方式」です。ただし、HIMACを参考に設計されたものではないのだそうです。 「どうやって考案したのかと尋ねたら、50人の研究者で5年実験を重ねてこの形に行き着いたと答えました。佐藤さんは、20年以上前に1人で到達したんですから、天才です」と話すのは、土岐博・大阪大学産学連携本部特任教授(元大阪大学核物理研究センター長)です。「佐藤さん」とは、HIMACのシンクロトロン建設を仕切り、メーカーの拒否を押し切って対称3線方式を導入した佐藤健次・元放医研医用重粒子線LOHASMEDICALVIEW4LOHASMEDICAL


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