ロハス・メディカルvol.114(2015年3月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年3月号です。


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研究部第2室長(大阪大学名誉教授)のこと。 この2人は大阪大学核物理研究センターのかつての同僚です。土岐氏は佐藤氏からの依頼で対称3線方式の物理学的根拠を検討し、予測不能だった電磁ノイズを方程式で扱える新しい理論(土岐・佐藤理論)を樹立※1、2009年に2人の共著として論文発表しました。この論文は2011年に日本物理学会論文賞を受賞しています。 土岐氏がCERNへ行ってLHCの電源について尋ねたのには伏線がありました。 2009年の論文で発表した理論自体は、前年に完成していたそうです。そして丁度その時、高エネルギー加速器研究機構(KEK)が茨城県東海村に建設した日本最大のシンクロトロン「J-PARC」メインリングが、起動してもすぐ運転が止まってしまうというトラブルに見舞われていました。電磁石電源のノイズの周期とビームの周期が揃ってしまい共振を起こしていると考えられました。 余談ながら、KEKは、HIMAC建設の中心メンバーたちが推進していた「ニューマトロン」計画の息の根を止めた高エネルギー物理学研究所を前身としています。 話を戻すと、トラブルを知った土岐氏と佐藤氏は出かけて行って理論を説明、小林仁・KEK東海キャンたのです。その時、CERN側のメンバーからは「お前の数学はサッパリ分からなかったけれど、お前の言うことは非常によく分かる」と言われたそうです。そして見せてもらった電源が「完璧な対称3線」でした。 さて、「対称3線」って何? というのが気になっていることでしょう。 それまで導線は2本というのが当たり前だった回路の中央に線を追加してノイズフィルターを付ける、追加した3本目の線から見ると元の2本が完全に対称となっている、というものです。 この回路にすると何が起こるのでしょうか。 それまでも、導線を流れる本来の電流の凸凹という(ノーマルモード)ノイズ以外に、いったん環境(アースなど)へ出て行き周囲に影響を与えたうえで導線へ戻って来る(コモンモード)ノイズがあることは知られていました。ただ、コモンモードノイズが、なぜ、どのように、発生するのか分かっておらず、フィルタ日本最大の加速器にも対称3線とは何かパス所長の決断で電磁石電源240台の回路をすべて対称に改造したところ、それだけで運転できるようになったのです。 ただ、運転できるようになったとはいえ、建設がほとんど終わってしまってからの改修だったため、対称化が不十分で、必要なノイズフィルターを付けられませんでした。いまだにノイズはHIMACより1ケタ大きく、これからさらに全面的な対称3線化への改造が予定されています。 CERNのLHCも2008年の運転開始後間もなくヘリウム漏れ事故を起こして止まっていました。そこで、同じようなことが起きたのでないかと考えた土岐氏と小林氏の2人で出かけて行って、理論を説明しLOHASMEDICALVIEW※1電磁気学の分野ですべての基礎に置かれている「マクスウェル方程式」から近似なしの演繹を行い、複数の導線を電流が流れるのと、その一部がアンテナから発信されるように電磁波として放射される現象を同時に記述できるようにした。5LOHASMEDICAL


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