ロハス・メディカルvol.114(2015年3月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年3月号です。


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LOHASMEDICALVIEWーを付けることもできませんでした。土岐・佐藤理論は、コモンモードノイズに加えて電磁波の放射ノイズが必然的に発生するものであることを明らかにしました。そして、コモンモードノイズ用のフィルターを付けるためには、電流を環境へ逃がさないための3本目の線が必要だということも分かったのです。3本目の線から見て他の2本が対称でないと、ノーマルモードノイズとコモンモードノイズが合体して制御不能になること、対称3線だと回路で電磁波の放射・受信が起きにくいことも式から導かれました。 つまり、「対称3線」はノイズを低くするための単なる改良ではなく、理論上ベストの方式だったのです。 紙と鉛筆で計算した佐藤氏が、嫌がるメーカーを押し切って製造させたのは前回既にご紹介しました。ただし佐藤氏が全くゼロから考案したのではないそうです。 「CERNのPS(陽子シンクロトロン)の報告書の中にファンデルメール※2が描いた回路図があり、そこでは大地が1本の配線として扱われていて、大地に対して部品が対称に配置されていました。その回路は実際には製作されなかったようですが、紙と鉛筆で計算してみたら、ノイズの発生を抑えるのに良さそうでした。後にTARN2で実験した時に、環境から反射してくるノイズの存在に気づいて、3本目の線を入れてインピーダンスを整合※3させたら、それは防げるなと確信を深めたわけです」だそうです。 また土岐氏は、「マニアの人たちの話では、アナログオーディオのHIFIセットでは、ノイズを低くするため線を3本にして対称にパーツを配置するのが当たり前だったそうですね。でも、あくまでも経験として知られていただけで、根拠づける理論がなかったから、ノウハウが広がらなかったのでしょう」と言います。 さて、世界最先端を行くCERNのLHCにも採用されたことで、加速器の電磁石電源が対称3線方式に統一されていくことは間違いないと考えられます。ただ、だからといって皆さんの生活に何か変化が起きるとは思わないはずです。 というのも、加速器は通常、この世界の成り立ちを宇宙創生期に近づいて理解するための実験に用いるものです。「知」を深めるのには貢献したとしても、生活には、まず関係ありません。 ところが、土岐・佐藤理論が登場したことによって、対称3線方式は、ノイズが問題になっているあらゆる領域に応用可能と分かりました。 難しい話になるので詳しくは説明しませんが、現代社会は、交流を直流へ効率良く変換しようとして大量の高周波ノイズを発生させており、その対策が急務になっています。対称3線方式は、皆さんの生活を激変させる可能性を秘めているのです。 「加速器業界から、ここまで一般社会に貢献できる成果が出てくるなんて夢にも思いませんでした」と土岐氏は言います。 加速器では、施設が巨大なため、粒子がリングを1秒間に何周するかという周期と電源ノイズの周期が揃って共振してしまい、ノイズを小さくしないとマトモに運転できません。一方で一般的な電子回路では、ノイ※2CERN創設の当初から加速器開発に従事し、1984年にノーベル物理学賞を受賞した学者※3ノイズフィルターを付けることとほぼ同じ。ノイズが悪さをする6LOHASMEDICAL


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