ロハス・メディカルvol.115(2015年4月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年4月号です。


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つい痛みが続いている場合)は、通常時とは違い、精神依存を起こさない仕組みになっているのです。 この連載の初回の内容にも通じることですが、高校生物で学習するように、ヒトの体はうまくバランスを取って生命を維持しています。興奮させるものがあれば、抑制させるものがあるように、アクセルとブレーキの両作用を持ち、どちらかに偏り続けないように調整しているのです。 精神依存は、脳の中の報酬系回路(何かしたことに対するご褒美という一般の用語とはニュアンスが少々違いますが、モチベーションを上げたり、やる気を起こしたり、快楽に関係します)が関与しています。報酬系には、ドーパミンという物質を出させる作用と、出させ過ぎないようにする作用とがあり、バランスを取っています。しかし、モルヒネは、出させないようにする作用を抑制してしまいます。つまり、ブレーキにブレーキをかけてしまうため、アクセル全開状態になるのです。ドーパミンがどんどん出て、さらなる快楽を求めて加速し、自分の意思ではもうどうしようもありません。 一方、緩和ケアを受ける際のように痛みが強く発現している場合は、ブレーキが踏み込まれたまま固まっているようなものです。鎮痛目的でモルヒネを投与しても、ドーパミンが過剰に出ないことが分かっています。 健康を考える上で、いつも念頭に置いていただきたいのは、私たちの体はうまくバランスを保とうとする機能が備わっているということです。ヤジロベエを思い浮かべてみてください。多少無謀なライフスタイルで傾いても、やがて釣り合ってきます。困るのは、大きくどちらかに偏って揺れがなくなってしまった時です。薬物乱用は、ヤジロベエをどんどん傾けていきます。がん疼痛の場合は、最初からヤジロベエが傾いて動かなくなっている状態と言えます。一般の人が薬物を使用する場合とは異なるのです。 薬物に限らず、医薬品はすべて薬にも毒にもなります。体のヤジロベエがどういう状態なのか、誰が誰に使用するのか、ということを考えずに使用することは乱用です。適正使用を行い、乱用を許さない社会にしなければなりません。LOHASMEDICALVIEW体内のヤジロベエ 毎回、本文と関係のある絵本をご紹介していきます。 発刊が古くても解説がわかりやすい本がたくさんあります。また図書館にしかない本もご紹介いたしますので、ぜひお近くの図書館にお出かけください。川畑徹朗監修学研教育出版 2009年原田幸男監修少年写真新聞社 2006年水谷修著東山書房 2004年大人にもオススメ子ども向け絵本安全な毎日を送る方法③飲酒,喫煙,薬物乱用から身を守る新体と健康シリーズ近づかない手にしない命を蝕むドラッグ乱用ドラッグなんていらない出会ってしまう前のきみに伝えたいこと3ROBUSTHEALTH


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