ロハス・メディカルvol.115(2015年4月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年4月号です。


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寸前に完成しているでしょう。今だったら絶対に造れませんよ」と、鎌田氏は言います。 「ジャパン・アズ・ナンバー1」という不遜な言葉に、国民のほとんどが違和感を持たない時代がありました。近年では想像もつかないことながら、HIMACが治療を開始する直前の1990年度から93年度までは、絶好調の経済状況を反映して赤字国債が発行されていません。 戦略的投資に失敗しても許される財政状況があり、だからこそ、ほとんどの医療関係者が失敗すると思っていた重粒子線治療を始めることができたのです。同じ時期に米国経済は絶不調で財政状況も悪く、これが重粒子線の研究が打ち切られて陽子線研究一本槍になってしまったことに影響しています。日本の関係者が知力と情熱の限りを注ぎ込んだことによってHIMACが成功したことは紛れもない事実ですが、現在の圧倒的なリードには当時の財政状況が影響していること、そのような財政状況は私たちが生きている間に二度と来ないことを忘れてはいけません。 しかもLBNLで研究が行われていた時代は、画像診断の技術が未成熟でした。「CTは出たばかり、MRIはない、PETもないでは、腫瘍の位置を確かめようがありませんから、いくら重イオン線の線量分布がよいと言っても、活かしようがありません。放医研が始めた時は、CTの性能が良くなっていたし、MRIやPETも普及し始めていました。の患者が恩恵を受けられるようになるのは何年も先の話で、その時まで日本がリードを保ち続けているという保証はどこにもありません。確実に世界をリードしており、広く普及している炭素イオン線を、その強運に感謝しつつ、もっとどんどん発展させて世界へ売っていってもよいのではないでしょうか。 なぜ、こう書くかと言えば、7月号でも指摘したように、その安全性と有効性については誰も異論がないのに、後出しジャンケンのように「費用対効果」がどうのこうのという議論が出てきて、健康保険がいまだに適用されていないからです。 そのため患者は、HIMACの場合で314万円の自己負担が必要です。お金持ちか民間の医療保険などに入っている人でないと、手が届かないのです。結果、どこの粒子線施設もフル稼働せず、それこそ費用対効果の悪い状態に留まってしまっています。 しかも、健康保険を適用するか否かで大揉めに揉めた2012年の先なぜ保険適用しない?ちょうどよいタイミングでスタートできたと思います」と鎌田氏は言います。 この時代の幸運がなかったら、日本がリードしていたとは限らないのです。しかもHIMACの幸運はこれだけに留まりません。国の財政が悪化し大盤振る舞いが許されない中、12月号でご紹介したシステム更新(新棟建設)に成功しています。これは、ちょうどリーマンショックで経済が冷え込んでから東日本大震災で建築相場が高騰するまでの間に工事が行われたため、「今では考えられないくらい安く造ってもらえたと聞いてます」(鎌田氏)。 世の中では、IPS細胞関連の再生医療で世界をリードしていると思っている人が多いようですが、一般LOHASMEDICALVIEW5LOHASMEDICAL


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