ロハス・メディカルvol.115(2015年4月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年4月号です。


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くたに扱うのではなく、陽子線と炭素イオン線は別物として扱う時期に来ているのではないでしょうか。 鎌田氏は、炭素イオン線では治療患者を大幅に増やせることは認めつつ「最初から1件あたりの収入が少ないと初期投資の大きさが響きます。1000人やらないとペイしないような設定だと、そこに達するまでの最初の何年間かを生きられませんから」と言います。 逆に言えば、その何年間かしのげるなら、価格は低くできるわけです、安倍内閣の成長戦略の一環として2013年6月に策定された健康・医療戦略には「重粒子線がん治療装置について、小型化・高度化に関わる研究開発や海外展開を視野に入れた研究開発を行う」と書き込まれています。本気でやるつもりなら、ペイできるようになるまでの初期投資部分を公費で面倒みる代わりに、健康保険を適用し、使い込んでノウハウを蓄積させていきながらイノベーションを促すというのが合理的ではないでしょうか。 陽子線施設を護送船団方式で守っている間に、虎の子の炭素イオン線でリードを失わないか、心配です。 施設側は能力が十分あったとしても、そんなに対象患者がいるのかと思う方もいることでしょう。心配ご無用です。 HIMACの当初10年間の臨床試験を受けて2004年に開かれた文部科学省の「粒子線がん治療普及に向けた勉強会」は、他の治療法よりも重粒子線の方が良い結果を残すと考えられる患者の割合を7%近いと推計しました。少なくとも1施設が年間1000件の治療をした程度では全く追いつかないくらいの対象患者は存在します。しかも、この時点の治療対象は、がん種をかなり限定しており、現在の対象はもっと広がっています。 また、費用が高価で、その線量分布の良さゆえに「難しいがんを治療できる切り札の装置」としてイメージされることも多いのですが、実は照射回数が1回や2回で済む(しつこいですが陽子線では不可能です)ような簡単ながんでは、手術の代わりと位置づけることが可能です。体を切られないで済む患者からすれば、むしろ手術より良いかもしれません。 HIMACに最初の予算を取った間宮馨・元放医研企画課長(最終的には文部科学審議官で退官)も「重粒子線に保険を認めちゃうと、外科医がおまんまの食い上げになるから抵抗が強いんでしょう」と言います。ただ、現実に外科医の仕事を奪ってしまうほどの施設数はありません。そもそも激務から外科医志望の若手医師が減り社会問題化しつつあります。また社会が高齢化すればするほど手術に耐えられない患者の割合も増えます。どうしても入院手術でしか治療できない難しいもの以外は、外来の炭素イオン線治療へ回すような発想の転換をしてもよいのではないでしょうか。そうすれば、とてつもない数の患者が治療対象になり、1施設で治療できる患者の数も大幅に増えます。 暴論に見えるかもしれませんが、ガラケー(ガラパゴス携帯電話)に力を注ぎ過ぎた日本メーカーの失敗例でも分かるように、国内に過剰適合した結果、世界で売るチャンスを逃すことがあります。簡単な手術のLOHASMEDICALVIEW外科医が嫌がる?7LOHASMEDICAL


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