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その点について、何らかの制度変更が必要ではないでしょうか。例えば、介護事業者が従業員の社会保険料や雇用保険料を払ったら、その事業者負担分のいくらかを国が負担するなど、やり方は色々考えられると思います。事業者が正規雇用をためらう理由の多くはコストなので、事業者側の負担の軽減策が有効です。 介護労働における雇用の不安定感を解消しなければ、いつまでたっても人材が定着しません。こうした対策をとらないまま制度維持のために、今回のように介護報酬引き下げなどだけを行ってしまったら、ますます不安定なイメージが増幅して人が離れるでしょう。こういう介護業界であり続けることが国民にとってよいことかというと、決してそうではないはずです。 この話をすると「社会保険などがあっても、年々給与がて雇用も不安定になる可能性があります。 介護職はほぼ半分がパートやアルバイトなど非正規職員です(介護労働安定センター、2013年度介護労働実態調査より)。介護従事者の労働条件などに関する悩みを見ると、賃金の低さも多くありますが、非正規による雇用の不安定さや、正規職員になれないことも挙がっています。 正規職員になりたいという人の中には、年金や社会保険、雇用保険など、正職員に準じた保障をしてもらいたいということで、必ずしも正規職員という立場にこだわっているわけではないという人も多いと思います。前号でも述べましたが、非正規職員という立場がいけないのではなく、雇用形態の不安定さが問題なのです。非正規であっても正規職員に準じた保障を受けられるようにして、安定して働き続けられる雇用を保障すればよいのです。増えたり、職場でキャリアアップしたりできるような仕組みがなければ魅力ある業界にならない」という意見が必ず出ます。しかし、私は介護業界に「キャリアアップ」という考え方はあまりなじまないのではと考えています。 非正規職員の中には家庭や他の仕事の都合で短時間労働を希望する人もいますから、皆がキャリアアップを望むわけではありません。もちろん希望する人には何か仕組みがあるとよいですが、公的に一律の仕組みを作るのは限界があると思います。 私自身は、介護業界だけでなく、今後は日本全体に「キャリアアップ」という考え方がなじまなくなっていくとも感じています。日本人は世界的に見ても勤勉で、残業時間も長く、家庭を犠牲にしてでも会社のために尽くすことを美徳としてきましたが、それは高度経済成長時代の物語です。いわゆる欧米の先進国では、父親は5時ごろには仕事を終えて家庭の時間を大切にし、子どもの誕生日には仕事を休んだりします。 日本でも、ある程度所得が低くても、プライベートや家庭を充実させることを望む人たちが増えつつあります。特に若者にその傾向が強いです。 また、日本の介護離職者が年間約10万人という現状を考えれば、今後も働きながら介護をする人は一層増えるでしょう。その時に安定した雇用の中でワークシェアをしていくことができなければ、超高齢社会を支えられません。 先ほどの調査で介護従事者の悩みの中には、有給や休憩時間の取りにくさ、労働時間の長さも挙がっていました。雇用の安定には、仕事にゆとりがあることも含まれます。元々非正規職員の多い介護業界だからこそ、積極的にこういう働き方のスタイルを提案していくことは可能だし必要になってくると思います。ワークシェアをLOHASMEDICALVIEWLOHASMEDICAL