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? 急死する人間は少なからずあり、防ぐことはできません。したがって、独居を認める限り、孤独死を完全にゼロにすることは不可能です。私は自ら選択し、社会との接点を維持したままでの孤独死は全く否定しませんし、むしろ自立した死として、積極的に受け容れたいと思います。真の問題は孤独死の増加、というよりも長期間発見されない孤独死の増加にあると思うのです。 2013年の東京都監察医務院のデータによれば、発見から4日以上かかった孤独死は男性53・6%、女性で34%です。この数値から相当数の独居者が、何日間も誰とも口をきかない孤立した生活を送っていると想像されます。 都市部にこういった状況が生まれる背景は、様々な政策と無縁ではないような気がします。例えば、高齢者対策として主に行われるのは、在宅医療に予算を付けたり、介護施設を作ったり、もしくはサービス付き高齢者向け住宅の建設に補助金を出したり、優遇したりという取り組みです。これも一方では必要でしょう。しかし、これらの取り組みの多くは、そこにたどり着ける人には安心を提供しますが、社会との接点を持てずに孤立した人をいかに減らすのか、という部分については無力です。 社会福祉協議会は「サロン」といわれる高齢者の集まりを企画しています。私も何度か参加していますが、参加者のほとんどは女性です。男性は20名中1∼2名程度です。「サロン」では、参加しない人をどうにもできません。このことと、男性の孤独死が多いこととは無縁ではないでしょう。 国立社会保障・人口問題研究所の2014年4月推計によれば、全国で高齢者人口に占める独居高齢者の割合は今後、増え続けます。東京都では、2010年には65歳以上人口に占める独居者の割合は24・2%でした。東京都の65歳以上の独居高齢者数は2010年の64万7千人から、2025年には89万人まで増加します。75歳以上になると要介護者が増えてきます。東京都の75歳以上の独居高齢者数は、2010年の33万6千人から、2025年には、56万5千人まで増加します。首都圏は全国で最も介護施設の足りない地域です。現状のままだと長期間発見されない孤独死が大幅に増加します。 私たちの今のサービス体系は、ともすれば、高齢者を通常の社会から分離することで、安全を確保するという方向に向かいがちです。高齢者専用住宅などはその顕著な例でしょう。しかし、その方向だけでは、人は幸せにはなれないのではないでしょうか。今こそ、シャイで個人の中にこもりがちな人たちを、社会の中に包摂していく仕組みが求められているのではないでしょうか。自立しつつも、何らかの社会活動に参加し、最期の時まで人間関係の中で自分の居場所が確保される。実現できれば、孤独死になっても、比較的短期間で発見されるはずです。難しいことですが、都市ではこれが特に求められていると思います。 はじめの方の話に戻ると、彼女は近所の人に鍵を預け、雨戸が開かなかったら見に来てくれるように頼んでいるようです。また、毎日、姉妹と電話をし合っているということでした。つまり、彼女が亡くなれば24時間以内に見つかることになりますし、社会との接点は強く密に保たれています。医師としての私が彼女に言うべきなのは、そういった状況は幸せで、悲観すべきことではなく、堂々と一人で死ねれば、こんなに良いことはないということでしょう。LOHASMEDICALVIEWこもる人を包摂する28LOHASMEDICAL