ロハス・メディカルvol.116(2015年5月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年5月号です。


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おおにし・むつこ●医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて基礎研究に従事。LOHASMEDICALVIEWした上でピーナッツバター状にして、5匹のマウスにそれぞれ5日間ずつ自由に食べさせました。その後、マウスの体重と餌の摂取量、身体活動を測定しました。 その結果、餌によって身体活動量と体重変化には特段の差が出ませんでしたが、生のまま与えた時は、加熱調理した落花生を食べさせた時に比べて、より多くの量を摂取しました。つまり、加熱調理した落花生は、生のままよりも効率よく、同量でより多くのカロリーを得られたことを意味します。 加熱した落花生の微細構造を分析したところ、細胞壁を構成するセルロースが分解され、脂質を包むタンパク質の断片が細胞の表面に現れていました。このため脂質を利用しやすくなり、より多くのカロリーを得ることができたと考えられます。実際、マウスの糞便中の脂質の排泄量を調べたところ、加熱調理した落花生を摂取したマウスは、糞便中の脂質の排泄が少なくなっていました。 今回の報告は脂肪に焦点を当てていましたが、実は炭水化物とタンパク質が豊富な食品についても、加熱調理によって得られるカロリーが増えることは既に確かめられています。 近年、食事や食材のカロリーは、減量や体重維持の文脈で語られるものになっています。しかしそれは飽食の現代に限られたことであって、人類の歴史から見れば異常事態です。 私たちの祖先は長い間、限られた食べ物しかない環境を生き抜いてきました。いかにカロリーを効率的に摂取するか、ということが生き延びるための重要な課題でした。人がカロリーの高い食品を求めるのは当然のことであり、進化の過程で本能に組み込まれ熱調理が食材の保存性や味を向上させることは広く知られています。それだけでなく食材から得られるカロリーを増やし、人類の発展に大きく寄与していたこと、ご存じでしたか? 加熱で肉や魚は殺菌されて生の状態よりも腐りにくくなりますし、米や芋類、野菜なども加熱すると甘みが増して、おいしくなりますよね。 それだけでなく、脂質を多く含む食材のカロリーを実質的に増やす効果があると、ハーバード大学人類進化生物学講座のエミリー・グループマン医師らが『米国自然人類学誌』に報告しました。 グループマン医師らは、脂質を多く含む食材の加熱調理による影響を調べるために、落花生を①生のまま、②生のままピーナッツバター状にして、③167℃で17分間加熱調理して、④17分間加熱調理加第32回食材を加熱すると実質カロリー増える内科医(ボストン在住)大西睦子加熱調理が進化の源脂肪を利用しやすく


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