ロハス・メディカルvol.116(2015年5月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年5月号です。


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かつて、一般にサラダ油と呼ばれる植物性油脂(紅花油、ひまわり油、コーン油など)は、多価不飽和脂肪酸を豊富に含むことから、血中のコレステロール値を下げると言われていました。しかし、サラダ油の中心成分であるリノール酸は、多価不飽和脂肪酸の中でもオメガ6脂肪酸の代表例です。オメガ6脂肪酸は酸化しやすく、しかも過剰にあるとHDLコレステロールまで減らすため、生活習慣病やアレルギー体質の引き金になることが報告されるようになりました。揚げ物やファストフード、スナック菓子など、現代の食生活ではオメガ6脂肪酸を過剰摂取しがちなことが問題視されています。米国でも、飽和脂肪酸の排除を徹底しようとした分、植物油と炭水化物に偏った食生活となり、コレステロール値は下がったけれども、HDLの減少と肥満の増加を招いたという説があります。植物油の落とし穴LOHASMEDICALVIEW現在は米国人より日本人の方が血中総コレステロール値は高くなっています。日本人では上昇したのに対して、米国人は低下傾向にあり、逆転してしまったのです。 「この背景には、50年以上も続いた、米国の低脂質・低飽和脂肪酸政策があると考えられます」と寺本特任教授。 飽和脂肪酸は、肉の脂身や乳製品など、動物性脂肪に多く含まれます。 1957年に米ミネソタ大のキーズ博士主導で始まった日米を含む世界7カ国共同研究で、飽和脂肪酸の摂取が多い国はコレステロール値が高く、冠動脈疾患が多いとの結果が示されました。1961年には、米国心臓病協会が飽和脂肪酸を問題視したガイドラインを発表、「飽和脂肪酸悪者説」は米国民の支持を急速に集めていきます。 1977年には上院特別委員会で、脂質と飽和脂肪酸の消費を減らす食事目標が掲げられました。目標達成へ、肉類やバター、卵、脂肪を減らし、鶏肉や魚、低脂肪乳を増やすことも盛り込まれました。 現在、米国のスーパーマーケットへ行けば、牛乳のコーナーに並んでいるほとんどが低脂肪乳です。筆者の留学時代の友人たちも「無調整牛乳は脂肪が多く体に悪い。飽和脂肪酸の大きな供給源である牛肉はやめて、代わりに鶏肉や魚、豆類を食べる方が体にいい」と当たり前に信じています(迷信の可能性もあります。コラム参照)。 一方の日本人は、同じ時期に食生活が急速に欧米化し、コレステロール値も上昇しました。寺本民生「『脂質異常症』について」(2010年度日本臨床検査標準協議会学術集会)、CDC『HEALTH,UNITEDSTATES,2013』、厚労省『平成22年国民健康・栄養調査結果の概要』より編集部作成図3日米総コレステロール値の推移総コレステロール(㎎/㎗)女性(米国)女性(日本)男性(日本)男性(米国)230220210200190180196019701980199020002010


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