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では、睡眠は短ければ良いでしょうか。「四当五落」というのはもはや死語かもしれませんが、睡眠を削り、起きている時間を延ばせば、何か〝良いこと〟が起こるという期待はまだ残っているようです。しかし、睡眠時間の足りない状態が続くと、健康を害したり、ミスを起こしたりするなど、そのツケは必ず回ることが明らかになっています。 世界各国の睡眠時間を比べると、我が国は短い方の上位3位に入ります。その上、国内では短時間睡眠(短眠)に拍車がかかっています。総務省の調査によれば、労働者で眠のリテラシーをいつもお読みくださり、本当にありがとうございます。今回で50回を超えました。そこで、睡眠の基本とも言える睡眠時間について改めて考えてみたいと思います。 大人の場合、長く眠ればよいわけではありません。例えば、週末に朝寝をし過ぎると、週明けは一種の時差ぼけのようになり、つらくなります。また、昼寝をとり過ぎると、その晩はうまく眠れません。そもそも体内時計などの働きによって、一定時間以上の長い睡眠をとろうとしても、できないようになっています。る睡眠時間を示しました。それによると、子どもは10時間以上、児童・生徒は8時間以上、大人は7時間以上だそうです。 このように特定の数値を示すと、異論と反論が必ず出ます。それぞれに明確な根拠があれば、検討すべきでしょう。暮らし方や働き方が様々であれば、最適な睡眠時間が一概に決められないのは当然です。もちろん、睡眠の質も考慮しなければなりません。米国睡眠財団はこれらは承知の上で、推奨の睡眠時間から大きくかけ離れることに警鐘を鳴らしています。その結末がやはり望ましくないからです。 睡眠は長さだけが重要ではありません。とは言え、短眠の甚だしい日本の国民が健康で安全かというと、疑問を持たざるを得ません。充分な睡眠時間自体は大切で、それを可能にするような家庭・職場・地域、そして国のあり方がもっと大事です。第51回たかはし・まさや●1990年東京学芸大学教育学部卒業。以来、仕事のスケジュールと睡眠問題に関する研究に従事。2000年、米国ハーバード大学医学部留学。独立行政法人労働安全衛生総合研究所作業条件適応研究グループ・上席研究員高橋正也その傾向が著しく、平日の睡眠は過去35年の間に42分も縮まっています。つまり、1年に1分以上縮まっているわけです。 眠りが短くなっているのは他の国も同じような状況ですが、それにどう向き合うかは、我が国とかなり開きがあります。なかでも、米国は特筆できます。 米国は国を挙げて睡眠を守ろうとしています。実際、健康政策では主な課題の一つとして睡眠を取り上げています。そのなかでは、睡眠の質の改善だけではなく、充分な睡眠時間をとる国民の割合を増やすことも目標にしています。「充分」の基準は、大人で7時間以上となっています。 政府のこうした動きに対して多くの機関が連動しています。健康な睡眠の推進を使命とする団体である米国睡眠財団は最近、これまでに発表された論文データを詳しく分析し、各年代において推奨され睡LOHASMEDICALVOICE