ロハス・メディカルvol.117(2015年6月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年6月号です。


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中医協 また、新しい医薬品や医療機器、医療技術などは、安全性や有効性を判定される承認とは別に、保険の対象にする(保険適用)かどうか、中医協に諮られ、決定されています。高価な抗がん剤など、この保険適用の幅が世界的に見ても広い(制限の少ない)ことは、イザという時頼りになる部分です。 とは言え、特に近年は何でもかんでも保険が適用されるということでは、なくなってきています。保険適用が認められていない医療行為を受ける場合には、原則として同時に健康保険から給付を受けることはできないというのが、いわゆる「混合診療禁止」です。「混合診療」できる範囲を広げることが、規制緩和の目玉的に扱われているのをご存じの方も多いことでしょう。 公的医療保険からの支払いは、入院した際の1日あたり定額のものを除いて、医療行為が行われた分だけ費用の積み上がる「出来高払い制」です。病名などによって自動的に支払額の定まる「定額制」と比べると、検査漬け、薬漬けなどの過剰診療が起きやすい仕組みです。ただし、医療行為の質を判定する仕組みのないまま定額制にすると、逆に過少診療が起きやすいので、これは制度だけでなく、運用でも併せて律する必要のある問題です。 もう一つ、日本の国民皆保険を世界でもユニークなものにしている特徴があります。患者が自由に医療機関を選び何度でも受診できるフリーアクセス制です。 高度な治療に辿り着くまでに専門家の関門を通る必要がある他国の公的保険に比べて、その利便性を高く評価されている一方、患者が専門家の支援なしに最適の選択をするとは考えづらいため、ミスマッチやハシゴ受診など医療資源の無駄遣いにつながる可能性も常に秘めています。このため、この点に関しても、かかりつけ医を持ち、まずそこを受診するよう促すため、紹介状を持たずに高度または大規模な医療機関を受診する場合には定額の上乗せ負担が発生するよう制度改定が行われる予定です。出来高払いフリーアクセスLOHASMEDICALVIEW さて、これら公的医療保険の加入者が保険証を使って医療を受けた場合、その値段は、医療行為や医薬品ごとに決まっていて、基本的に全国どこでも同じです。この値段のことを診療報酬と言います。その金額(点数)は、中央社会保険医療協議会(中医協=下コラム参照)の審議に基づいて厚生労働大臣が決めています。 全国各地に数多くの保険者や医療提供者がいるので、市場原理に任せると交渉が行われ、いくつもの値段が自然発生することになります。これを強く防いでいるわけです。良いか悪いか別にして、中央政府が医療の価格を単一に決めているのは、先進国で我が国だけです。 2年に1度、この診療報酬の改定が行われており、その度ごとに医療業界は大騒ぎになります。単一の公定価格 中医協は、保険者や被保険者、事業主など支払い側を代表する委員7人、医療提供者を代表する委員7人、中立的な立場で「公益」を代表する委員6人の計20人で構成されます。ゼロベースで議論するというよりは、事務局である厚労省の提案に対して意見を出し合うというのが実態です(詳しくは『ロハス・メディカル』VOL.46参照のこと。WEBサイトで電子書籍を読めます)。27LOHASMEDICAL


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