ロハス・メディカルvol.117(2015年6月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年6月号です。


>> P.30

第28回せん。そういった食物と比べて野菜の値段はとても高く、経済的にも野菜を買うのは困難です。また、職場に甘い物を差し入れることが喜ばれ、クッキーやケーキが毎日のようにどこかに置いてあります。こういった文化や習慣を変え国では3人に1人が肥満、16人に1が極度の肥満(身長170㎝だと、それぞれ体重87㎏以上、116㎏以上)であり、今後も肥満人口の割合は増加していくと予想されています。全体の人口が約3億人なので、1億人が肥満、2千万人ほどが極度術を受けた人は1年で体重が30%も減り、3人に2人は血糖値やコレステロール、血圧が正常化したという結果を見るにつけ、再考を余儀なくされました。それら多くの患者さんで服用薬の数が減り、生活の質が上がっています。今現在病的肥満で苦しんでいる患者さんを助ける解決策の中で、減量手術は頭一つも二つも飛び抜けています。事実、米国で減量手術を受ける人は年々増えており、2013年には18万人が手術を受けたと推定されています。 肥満の本質的な解決は、健康的な生活を送りやすくする社会インフラや制度の構築であるという考えは、今でも変わっていません。一方で、病的肥満の患者さんに対して、手術という選択肢は、冠動脈バイパス手術などと同様、医学的根拠に基づいた効果的な治療法として提示され、医学的適応に基づき実施されるべきだと思います。2007年東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を終え、2009年から米国ニューヨークの病院で内科研修。2012年からメイヨ―で予防医学フェロー。反田篤志ようと、小学校の給食を健康的なメニューにし、校内で炭酸飲料を買えないようにするなども試みられていますが、健康的な生活を促す施策は、大事な一歩一歩ではあるものの、即効性に乏しいのが現状です。 こんな状況を見かねてか、米国医師会は肥満を〝病気〟と定義することにしました。というのも、肥満を生活習慣の問題だと捉えると、〝本人の努力不足〟に原因を求める論調がどうしても残り、効果的な解決策を議論する支障になっていたからです。実際、いったん肥満になると体内の代謝調節機能が変わり、正常な体重に戻すことが本人の意思だけでは困難になると考えられています。肥満を医学的な問題と定義し直すことで、肥満につきまとう(個人の責任という)負のレッテルを緩和しようと試みたのです。 肥満を病気と見なせば、それを手術で解決することへの心的抵抗も減らせるかもしれません。私自身も以前は、減量手術(脂肪吸引ではありません)は問題の本質から目を背けているようで疑問に思っていました。しかし、数々の研究で、生活習慣を改善しようとする介入では1年に4∼5㎏減らせれば御の字という結果が出ている一方、代表的な減量手術である胃バイパスの肥満であり、控えめに見ても恐ろしい数字です。 〝健康的な食生活と適度な運動で肥満予防〟という一見正しい解は、文化的、社会的障壁に遮さえぎられ、短期的には実現不可能です。例えば、小さい頃から肉とパンとジャガイモで育った人たちは、急に野菜中心の食生活に変えられま3人に1人が肥満普及する減量手術米LOHASMEDICALVOICE30LOHASMEDICAL


<< | < | > | >>