ロハス・メディカルvol.118(2015年7月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年7月号です。


>> P.10

おおにし・むつこ●医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて基礎研究に従事。LOHASMEDICALVIEWに心疾患リスクが増加していました。 また、中国の華中科技大学同済医学院とハーバード大学の研究者たちが、鶏卵摂取と冠状動脈性心疾患や脳卒中との関連を調べた17論文を網羅的に解析したところ、やはり1日1個までなら鶏卵摂取と発症リスクに関連は見られませんでした。 ところがさらに解析すると、糖尿病患者では、鶏卵の摂取が多いと冠状動脈性心疾患のリスクが高まる一方、出血性脳卒中のリスクは低下するという、それ以外の人とは違う結果になったのです。 そんなことから、鶏卵摂取と糖尿病との関係が調べられるようになりました。 日本人では、昨年9月に鶏卵やコレステロールの摂取と2型糖尿病発症との関連性は認められないという研究報告がされています。 そこへ出てきたのが、今回の東フィンランド大の結果。むしろリスクを下げるというのですから大変です。ただし、今回の結果は、鶏卵そのものの効果とは限らないと解釈されています。フィンランドで日頃から鶏卵を摂取している人は、喫煙や運動不足、加工肉の消費といった不健康な生活習慣を持つ割合が少ないからです。 いずれにせよ、少なくとも糖尿病を悪くはしないということであれば、問題になるのは、結局そのコレステロールと冠状動脈性心疾患や脳卒中との関係です。 血液中のコレステロールが増えると、動脈硬化の原因になります。動脈硬化は、脳卒中や虚血性心疾患などの原因になります。その三段論法で、鶏卵を食べると脳卒中や虚血性心疾患のリスクが高まると懸念され、摂取を減らすよう広く推奨されていました。 しかし研究が進んで、体質師や研究者から悪者扱いを受けてきた鶏卵が、最近、見直されています。 4月、東フィンランド大学の研究者たちが、習慣的な鶏卵の摂取により2型糖尿病のリスクが下がり、血糖値も下がることを報告しました。 意外だと思います。これまで鶏卵は、含まれるコレステロール量が多いことから、冠状動脈性心疾患や脳卒中のリスクを上げると言われてきました。それなのに、なぜ糖尿病なんかとの関連を調べたのでしょう。 実は伏線があります。約15年前、ハーバード大学の研究者たちが、二つの大規模疫学研究の結果に基づいて、鶏卵を1日あたり最大1個摂取しても、冠状動脈性心疾患や脳卒中のリスクに影響を与えることはほとんどないという報告をして話題になりました。ただし、既に糖尿病にかかっている場合は、1日1個以上の鶏卵を食べていると男女共医第34回糖尿病のリスクが鶏卵で下がるかも内科医(ボストン在住)大西睦子限りなく冤罪


<< | < | > | >>