ロハス・メディカルvol.118(2015年7月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年7月号です。


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なぜ痩せる対策はないうか。 悪液質は、欧州連合の国際プロジェクトによって2 0 11年、「著しい筋肉量の減少が見られ(脂肪量の減少の有無にかかわらず)、栄養療法では改善が難しく、進行と共に様々な機能障害をもたらす複合的な栄養不良の症候群」との定義と診断基準(図1)が示されました。 読んでお分かりの通り、筋肉量の減少が最大の特徴です。筋肉減少は、日常生活に困難をきたすだけでなく、余命に直結する可能性もあります(図2はマウス実験)。この他に目立つ症状として、食欲不振や脂肪量の減少が重なって解を促進します。脂肪細胞でも、脂肪酸の取り込みと中性脂肪合成を妨げます。実際、炎症性サイトカインを、本来悪液質を起こさないがんを移植したマウスに注入すると、筋肉分解や脂肪分解が進みまきます。 体の中では、エネルギー消費量の増大、インスリン抵抗性(インスリンが効かず筋肉などが血中の糖を取り込みにくい状態)、急性期タンパク質(体内に炎症があると肝臓から血中への放出量が増えるタンパク質の一群)産生などが起きています。総じて、体を分解してエネルギーへ換える方向ばかりで、やじろべえのように体の状態を一定範囲内に収めようとするホメオスタシス(恒常性)が働かなくなっています。 「実験でも、餌を減らされて体重の減った健康なマウスは、餌を増やすと体重もすぐ回復しました。しかし、悪液質を起こすがんを移植されたマウスは、餌の量を戻しても体重が減り続けました」と早田准教授。 この一方通行の流れの原因と考えられるのが、炎症性サイトカインです。筋肉ではタンパク質合成を妨げ、その分性炎症があると、なぜ悪液質に陥るのでしょ慢体重減少≦5%食欲不振と代謝変化体重減少>5%もしくはBMI<20と体重減少>2%もしくはサルコペニア(筋肉減少)と体重減少>2%摂食量低下/全身炎症反応多様な悪液質の程度異化亢進と抗がん治療不能活動性の低下生存期間<3カ月FEARONK,ETAL:DEFINITIONANDCLASSIFICATIONOFCANCERCACHEXIA:ANINTERNATIONALCONSENSUS.LANCETONCOL12:489〜95,2011.より引用・改変図1がん悪液質の診断基準前悪液質死亡正常悪液質不応性悪液質


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