ロハス・メディカルvol.118(2015年7月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年7月号です。


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001030304050607020406080100(%)(日)CLONE20(N=11)CLONE5(N=8)腫瘍移植後の経過日数非悪液質腫瘍移植マウス悪液質腫瘍移植マウス生存率した。体の一部で炎症を持ったマウスに注入しても同じような反応が生じました。要するに、炎症性サイトカインの存在によって、食べた物が身につかず、体は削られる一方なのです。 となると、炎症性サイトカインの放出を抑えられれば、悪液質を改善できそうです。そういう効果を持つ抗炎症剤は、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDS)のアスピリンなど数多く存在します。そして動物モデルでは、狙い通りの効果が得られました。しかし残念ながら、ヒトではうまくいっていないと言います。 早田准教授はその原因について「NSAIDSには、悪液質を促進する側面もあるのです」と説明します。 そう、実は悪液質、炎症性サイトカインだけで起きるのではなく、他にも原因がいくつかありそうなのです。実験でも、がんでないマウスに、炎症性サイトカインを注入しただけだと、悪液質を完全には再現できません。 「強い炎症を人為的に起こした動物モデルと違い、ヒトでは弱い炎症で悪液質が進行していくため、抗炎症剤による改善効果が小さくなります。結果、悪液質を進展させる働きの方が上回ってしまうと考えられます」 近年では、がん悪液質が複合的な現象であることに対応すべく、複数の薬を併用する治療法の臨床試験が欧州などで実施されてきています。従来型NSAIDS以外の抗炎症剤と、抗酸化剤や代謝機能向上薬などを一緒に投与したところ、有効性と安全性が確かめられたそうです。 ただし現在はまだ報告も少なく、有効な薬の組み合わせの検討も課題です。研究の進展に期待がかかります。 全身性の炎症と、膵臓の腫れやしこり、そして黄疸は、膵臓がんの典型的な所見です。しかしこれらが揃っても、全く別の病気である自己免疫性膵炎の可能性があります。 膵臓がんの診断で切除手術後に組織を調べて誤診と判明することが、「かつては毎年数%にも上っていたようです」と、都立駒込病院の神澤輝実副院長。 神澤副院長は、自己免疫性膵炎が全身性の炎症疾患であることを突き止め、2003年に発表しました。2011年には、血液と注射で採取する組織の検査で、がんか膵炎か鑑別する方法を世界に先駆けて確立しました。また、膵炎の治療にステロイド剤が有効であることも明らかにしています。「がんならステロイド剤は逆効果ですから、正しい鑑別が何より重要です」KUNIYASUSODA,MASANOBUKAWAKAMI,AKIYOSHIKASHIIANDMICHIOMIYATA:CHARACTERIZATIONOFMICEBEARINGSUBCLONESOFCOLON26ADENOCARCINOMADISQUALIFIESINTERLEUKIN-6ASTHESOLEINDUCEROFCACHEXIA.JPN.J.CANCERRES.85:1124-1130.1994より編集部にて作成がんとは限らない炎症図2悪液質の有無でマウスの生存率に差抗炎症剤の効果は


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