ロハス・メディカルvol.118(2015年7月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年7月号です。


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排卵因子卵管因子着床因子女性造精機能障害男性不明はその子どもたちが支えていくべき日本の将来が危うくなることを危惧しています。そこで、私の専門である臨床精子学の立場から「ヒト精子に関する正確な知識」と「卵子側ではなく精子側からの視点で、不妊治療の問題点、特に顕微授精のリスク」を解説したいと思います。 一般的に妊娠、出産するのが女性であることから、不妊原因は女性側にあると思われがちですが、実際のところ約半数は男性側にあります(図2)。現在では様々なホルモン製剤(排卵誘発剤)が開発されたこともあり、女性不妊の治療成績は一部を除いて飛躍的に向上しました。 一方、男性側の不妊原因の90%は造精機能障害(精巣で精子をうまく造れない)であり、原因が明らかになる例は少なく、ホルモン製剤の有効性も低く、治療成績は伸び悩 さて、体外受精は体外に取り出した卵子に精子が自身の力で結合して侵入し、自然に受精する環境を整える方法です。一方、顕微授精は体外に取り出した卵子に、極細ガラス針を用いて精子1匹を穿刺注入して人工的に授精させる方法です(図1)。 生殖補助医療の歴史(表1)は浅く、日本で体外受精が行わるようになり約30年、また顕微授精が実施されて約20年であります。その間に急速に技術が進歩し、少子化問題を抱える日本の将来を考える上で不可欠な医療に成長しました。現在では、生殖補助医療により生まれた子どもは総出生数の約3%、出生児27人に1人に当たります。また、生殖補助医療における授精の70%以上を顕微授精が占めるまでになっています。 しかし、現在普及している顕微授精は問題を抱えており、このままでは、これから生まれてくる子どもたち、ひいてんでいました。そこで、ほとんどの不妊治療施設において、人為的に精子を卵子に穿刺注入することにより高い受精率が得られる顕微授精が汎用され、「1匹でも精子がいれば妊娠できる方法」「精子の状態が悪い方に対する唯一の対症療法」とされ、先述のように生殖補助医療施行の70%以上を占めるまでになりました。 しかし本来、顕微授精は精子数が少ないことを補う技術であり、精子の状態が悪いこと(すなわちDNAなどの精子機能の異常)を補償できるものではありません。 それなのに、これまで顕微授精に際して「精子をどのように卵子に穿刺注入するのか」という技術面ばかりが注目され、「どのような精子を卵子に穿刺注入するのか」という精子の選別、質の評価については、ほとんど関心が持たれませんでした。図2不妊原因の約半数は男性側半分は男性に原因LOHASMEDICALVIEW


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