ロハス・メディカルvol.118(2015年7月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年7月号です。


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の診察で、緊急を要するという判断になれば、そこから救急車が呼ばれます。このため救急車は15台あれば充分なのです。 病院に運ばれた後にも特徴的なことがあります。日本と同様に病院のベッドを増やさないよう強い規制が行われていて、入院の需要に対してベッド数が足りません。このため、本当に病院から出ることが不可能な患者以外は自宅へ戻され、その自宅に病院からスタッフがやってきてサービスプランを作成し、必要な機材類をセッティングして、病院のベッドとして認定するのです。そして病院から医療スタッフが通ってきます。サービスプランの内容が可能であれば、開業医や開業看護師、開業作業療法士などもやってきます。これが「在宅入院」という制度です。 日本だったら退院後の在宅医療の範疇に入るようなことで、これを「入院」と称する13年のデータを見ると、最低順位は「一般医」が7 9 95位で、「産業医」7920位、「精神科医」6341位、「内科専門医」4052位、「小児科医」3150位、「産婦人科医」1997位、「外科専門医」1955位⁝⁝などとなっています。 驚くのはここからです。急に体調が悪くなった時に救急コールセンターに電話しても、日本の119番と違って必ず救急車が来るわけではないのです。 代わりにやって来るのが「SOS メドゥサン」と呼ばれる24時間365日対応の緊急往診サービスです。1 0 00人以上の医師が従事していて、連絡を受けた医師が自分で車を運転して患者さんの元へ駆けつけます。費用は医療保険でカバーされ、年間の利用数はフランス国内で80万件以上と言われています。そのは詭弁と感じますが、それほどの抵抗もなく受け容れられているようです。 そのような在宅入院の期間を過ぎると、訪問看護師と看護助手(日本で言うところのヘルパー)などが高齢者宅を訪問して必要な看護や介護を行うようになります。 このケアサービスにかかりつけ医は、日本で言う「連携」をせず、必要があって患者宅から呼ばれた場合のみ訪問します。またケアサービスが提供される時間帯は午前8時から午後8時までで、夜間のサービスはありません。このため、独りで亡くなっているのを見つかる高齢者は珍しくないのだとか。「そんなものですよ。死に目に誰かが遭遇するのはラッキーな出来事なんです」と看護師は言っていました。 フランスでは2005年に、終末期に患者の意思に基づいて治療の中止や差し控えを認める通称レオネッティ法が、成立しています。そもそもギリギリまで命を長引かせるという考え方自体が存在しないようです。 要するに、彼らは終末期の医療もある程度で構わないという社会的コンセンサスがあって、やれる範囲でやっていこうということなのです。これと比べると、日本のめざす地域包括ケアの絵が高いレベルを追求しているということを感じます。 もちろん日本の地域包括ケアは、理念としては素晴らしいことです。しかし、極めて難しいことにチャレンジしていて、もし成功するとしたら日本だけだろうし、他国からは「そこまでしなくても」と言われてしまうだろうな、と思います。 「こうあらねばならない」という肩の力を抜いて、現実的なことから模索してもよいのかもしれません。できる範囲電話すると医師が来るLOHASMEDICALVIEW29LOHASMEDICAL


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