ロハス・メディカルvol.119(2015年8月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年8月号です。


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 熱中症予防のために水分補給をする際、気をつけなければならないのは、上の表にもある熱けいれんです。 大量に発汗した際にお茶や真水を大量に飲むことで、体内を巡っている血や体液が極端に薄まってしまいます。中でもナトリウム(塩分)の欠乏が筋肉のけいれんをひき起こします。このところ夏になるとやたらと店頭に並ぶ「塩入り」の清涼飲料水も、この熱けいれん防止を売りにしていることになります。 なお、緑茶や紅茶、烏龍茶、コーヒーなどカフェインを含む飲み物やアルコールには利尿作用もあるため、脱水防止に飲むには本来あまり適していません。お茶だけ飲んでいるとキケン熱中症の3段階LOHASMEDICALVIEW出典:日本救急医学会「熱中症ガイドライン2015」より編集部にて作成ぐに空気中に蒸発していきます。一方、東京の夏の湿度は平均で75%近く、梅雨なら連日90%を超えることもあります。空気中に水分がたくさんあって蒸発の余地があまり残されていないということですから、汗はなかなか乾かず、体温も下がりません。 体温が下がらずに発汗が続けば、結果として脱水が進行し、熱中症に陥ってしまいます。熱中症は、表のように3段階に分けられますが、いずれも私たちが生まれ持った、体内の状態を一定に保とうとする仕組みが、高温多湿環境下で破綻してしまったものと言えます。 単なる高温より多湿の方が体に大きな負担となることは、2種類のサウナを比較した実験(右下コラム参照)でも確かめられています。 さて日本の夏の厳しさは、ご納得いただけたと思います。特に気をつけていただきたいのが、高齢者です。 自宅で普通に過ごすうちに熱中症にかかってしまうパターンが多いのです。国立環境研究所の熱中症患者情報速報平成26年度報告書によると、熱中症患者のうち男性の35%弱、女性の50%以上が高齢者で、そのうち男性は半数近く、女性では7割近くが住居内で発症していました。しかも年齢が高くなるに従って症状の深刻な患者の割合が増える傾向が見られました。 高齢者は元から体温調節機能が低下しています。喉が渇いたという感覚も衰えてくることが多いため、意識してこまめに水分と塩分を補給する必要があります。トイレを気にして夜間の水分補給を控えたりするのもよくありません。そして、過剰に汗をかかなくても済むように、適切に冷房を使うことが大切です。症状治療レベル1(軽症)めまい、大量の発汗、失神、筋肉痛やこむら返り(熱けいれん)、生あくび、意識障害は認められない冷所にて安静、体表冷却、水分と塩分の経口補給(症状が改善しなければ医療機関へ搬送)レベル2頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下(軽度の意識障害)医療機関での体温管理、安静、水分と塩分の経口または点滴による補給レベル3(重症)中枢神経症状(意識障害やけいれんなど)、肝・腎機能障害、血液凝固異常のうち、いずれかを含む救急隊員や医師の診断により入院・集中治療、体温管理(体表・体内・血管内冷却など)、呼吸・循環管理、血液凝固治療など室内でも熱中症に


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