ロハス・メディカルvol.119(2015年8月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年8月号です。


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 日本では、1970年代後半のオイルショックをきっかけとして1980年、建設省(現・国交省)によって、断熱性や日射の遮蔽性に基づく住宅の省エネルギー基準が制定され、これまでに3回改正されています(最新は2013年)。 ところが、「1999年基準の家は新築の10%、工務店の半数は同基準の家を建てたことがないという話もあります」と前准教授。 近年は「エコ」を謳った住宅も多く見られますが、定義が曖昧で、イメージ先行のものも多いのだとか。高い吹き抜け天井や光を多く取り入れる大きな窓は、開放感には溢れている一方、冷暖房効率の点で問題があります。 「どんな家に住みたいかというアンケートでは、第1位が明るい家、第2位が冬暖かく夏涼しい家、という結果になるのに、実際には間取りや設備、はたまたローンのことで頭がいっぱいになり、外から見える部分にお金をかけがちになります。断熱などはコストカットの対象にされやすく、注文する個人客には知識がないので企業の言うなりになりやすいのです」と、前准教授は話しています。省エネ基準とエコ住宅LOHASMEDICALVIEWめてから部屋に送り出すものが多いからです。 また、室外機のない「除湿機」を使うという方、気化熱の反対で室温は上がるということを覚えておいてください。 さらに最近は、昔ながらの「打ち水」を見直す向きもあるようですが、前准教授は「水蒸気が発生して、かえって蒸し暑く感じる可能性もあります。そもそも地面の熱が一時、空気中に逃げるだけで、熱そのものが消えるわけではありませんから、効果のほどは疑問です」とバッサリ切り捨てます。 ここまで、高齢者は熱中症を予防するためにエアコンを使った方がよいということを、しつこいくらい説明してきました。ただし、外気から4〜6度下げるのをエアコンだけに頼ると、設定温度をとても低くする必要があり、それこそ体を冷やし過ぎてしまう危険が出てきます。 エアコンのスイッチを入れる前に、家の状態を点検しましょう。 まず一番大事なのは、不必要に温度を上げないため、日射しを遮ることです。庇で遮れない場合は、窓に日射遮断フィルムを貼る、あるいは、すだれやよしずを使いましょう。樹木やツル科の植物による「緑のカーテン」を作れるなら、なお良いでしょう。 次に重要なのが、断熱です。日中、屋根や西側の壁は非常に高温になります。その熱を室内に伝えさせてはいけません。断熱材をしっかり入れることが大切です。反射塗料などで日射を跳ね返すという手もありますが、「それをすると、冬に寒い家となります」と前准教授。断熱材なら、冬の冷気対策にも有効です。 窓も二重ガラスにしたり内窓を設置したりすることで、断熱性と気密性がいっそう高まります。手軽なところではカーテン1枚でも断熱効果はそれなりに得られるようです。 断熱や気密を徹底すると暑苦しそうと思うかもしれませんが、「すきま風がいくら通っても涼しくはなりません。きちんと日射しを遮り、断熱した上であれば、必要最小限の冷房で、快適な涼を得られます」だそうです。スイッチを入れる前に


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