120号(2015年9月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年9月号です。


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LOHASMEDICALVIEWようです。山田教授の書いた医療従事者向けの教科書『摂食・嚥下のメカニズム第2版』(医歯薬出版)によれば、唾液の材料は血液で、表2のように多くの働きがあります。 ビックリと思います。米飯をよく噛むと唾液と混ざり消化酵素の働きで甘くなる、という程度のことしかご存じなかった方も多いのではないでしょうか。 私たちが味を感じられるのは、食品中の成分が口の中の受容体と結合するからで、結合するためには唾液水分中に化学成分が溶け込んでいなければなりません。おいしさを充分に感じるためには唾液が必須ということですし、このメカニズムは次の胃腸の話にもつながります。さらに、唾液の出が悪くなると、むし歯や歯周病にもなりやすくなります。 続きまして④「胃腸の働 こう再確認すると、表の⑥と⑨〜⑪を除く7個については、効用があって当たり前かもしれません。 ⑥や⑨〜⑪に興味のある方には申し訳ないことながら、ここからは、あって当たり前の7個の効用の方を、もう少し細かく見ていきます。 ①「食べ物本来の味が分かり、おいしく味わえる」は、説明するまでもありませんね。②「口顎・顔面構造の発育を促進する」は、表情を作る顔の筋肉が豊かになるということで、健康への影響だけでなく美容面でも効果があるかもしれません。で、③「唾液の分泌を促進する」です。唾液に良いイメージを持っている人は、そんなに多くないと思います。それが分泌されることって、わざわざ特記するほど良いことなのでしょうか。 はい、どうやら良いことのきを促進する」です。実感としては分かると思います。正確には、空腹を感じてから、食べ物を探し、見つけ、外見や匂いで食べ物らしさを確かめ、咀嚼してみるという流れの中で、胃腸の準備が整っていきます。この準備段階を素っ飛ばすと、「俗っぽく言うと、胃腸がビックリしてしまうわけです。それが証拠に、経管栄養では、消化の良いドロドロの状態のものを入れても、なお便秘になったり下痢したりします」と山田教授は話します。 関連して⑤「栄養素の吸収を助ける」になります。よく噛めば、どの栄養素を取り込んでいるのかの情報が口の中の受容体を通じて取れるので、その食材に適した種類と量の消化液が分泌されるようになると考えられています。不足しがちなミネラル分の吸収もよくなります。[表2]唾液の役割(『摂食・嚥下のメカニズム』より)食物を嚥下しやすくする味覚の発現緩衝作用(酸・アルカリ、熱)唇・舌の動きを滑らかにして発声を可能にする口腔内と歯を清潔に保つ抗菌作用水分代謝の調節口腔内を常に湿らせ粘膜を保護する消化作用体温調節体内の不要物・有害物を排泄する4LOHASMEDICAL胃腸がスタンバイ唾液の働き


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