120号(2015年9月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年9月号です。


>> P.11

いと感じています。医療や介護に関する情報のIT化は確かに必要とは思いますが、マイナンバーとは別の仕組みで行うべきです。 反対する最大の理由は、金銭的情報と身体的情報が紐づいて同時に漏れてしまった時、その個人が受ける不利益は想像を絶するからです。 まず、就職の際、雇用主に対してマイナンバーを知らせなければなりません。当然、雇用主に知られたくない健康情報だってあるはずです。これが漏れないという保証がありません。 「マイナポータル」というネット上で自分の情報を確認できる仕組みも準備されるようです。そのサイトを結婚前に結婚相手から見せろと言われたらどうでしょう。もちろん拒否する権利はあるわけですが、見せられないのは何か理由があるからだろうと勘繰私は現職の参議院議員で、法案に賛成しました。 給与所得者(サラリーマン)と自営業者の所得計算に関わる差異や、お金のフロー(稼ぎ)には課税されるけれどストック(資産)にはほとんど課税されないとか、色々な論点があり、社会の公平性の観点から、お金に関して透明性を上げていくのは必要なことだと考えたからです。 実際その時の政府の説明では、マイナンバーは、税金や社会保険料の徴収や年金給付など、現金に関係する情報とだけ紐づけられるということになっていました。 しかし、その後、折角だからあれもこれも一緒にしたらいいんじゃないかという議論が行われるようになってきました。医療や介護のような現物給付の情報がその最たるものです。 それは、医師という立場からも、患者・利用者という立場からもやめておいた方がよられるかもしれません。 また、前回も問題を指摘した地域包括ケアでは、近隣に住むというだけの理由でケア提供者が、多数家の中に入り込みます。もし身体的情報がマイナンバーと紐づいていたら、逆に金銭情報にアクセスできる可能性が出てきます。ケアの対象者がいたら、その家の経済状態が丸裸になっても構わないというのは乱暴過ぎるでしょう。 データを活用して何かをしようとする側の立場になっても、不要な機微情報が勝手にくっついてきて後から責任(懲役や罰金)を問われるかもしれないと想定したら、怖くておいそれとは手を出せないはずです。 要するに医療・介護のサービスを受ける側(患者・利用者)にとっても、提供する側(医療・介護従事者)にとっても、個人情報に定められた「マイナンバー」に一元的にぶら下がった状態の医療・介護情報を扱うようになることは、鬱陶しい以外の何物でもないということです。マイナンバーと医療・介護情報は別枠で扱うべきです。 一方で法改正で、「匿名化」ができれば、個人情報の扱いは今までよりも格段に容易になり、色々な目的に使えるという道筋もできそうです。「気持ち悪い」と思う方がいる反面、社会を効率よく運営するためには、事実に基づいた正確な情報が有用であることもまた事実です。 医療・介護情報も、創薬につながるかもしれませんし、地域ごとの需給のミスマッチが分かる可能性だって大きいでしょう。 すべきことは、情報を活用して社会が得られるメリットを考えた時、個人のリスクをいかに許容できる範囲に納めるかだと考えます。個別の論点は次号でご説明します。医療・介護情報は別枠で情報解析は社会に有用LOHASMEDICALVIEWLOHASMEDICAL


<< | < | > | >>