120号(2015年9月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年9月号です。


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川久保佳津江さん/介護支援サービス ふじの花 取締役相談役/電話0466(54)5322「認知症にやさしい社会」を合言葉に活動するNPO法人ハート・リング運動。お問い合わせは、INFO@HEARTRING.OR.JP か、03-3582-8100 まで。LOHASMEDICALVOICE第21回出で探しましたが見つからない。徘徊⁝⁝という言葉が頭をよぎった時、ふと私は、お爺さんがいつも故郷の野の花や田舎の風景の話をしてくれていたことを思い出しました。そう言えば、隣の鎌倉市との間にお爺さんが好きそうな野原がある。あそこかもしれないと、野原に駆けつけた私は、そこで独り不安そうにたたずむお爺さんを見つけ、思わず抱きしめました。その時の安心したような笑顔が今でも忘れられません」 こんなこともあったそうです。言うことをなかなか聞いてくれない職員泣かせのお爺心を込めて向き合えば、認知症の方にも必ず寄り添える。私は自分の経験からそう確信しています」 そう話すのは、神奈川県藤沢市を中心にサービスを提供する介護事業所の役員として、また自分自身もヘルパーとして忙しく活躍している川久保佳津絵さんです。川久保さんが事業所を開設したのは、およそ20年前。現在までに多くの認知症の方のサポートをしてこられたそうです。 「ある時、70代の認知症のお爺さんが独りで家を出て行方不明になってしまいました。ご家族や、事業所の職員が総ハート・リング運動 事務局長早田雅美さんに、川久保さんが機転を利かせて「昔は町の電気屋さんをしていた方だったので、施設の電気製品の不具合を相談してみたら、表情が一変しました。現役時代のように上手には直せませんでしたけれど、『新しい物に買い替えた方がお安くつきますよ』と説明してくれた顔が、見違えるほど輝いていました」。 ある住宅街の家では、認知症のお爺さんが、暗い小さな部屋に押し込まれるように汚物まみれで暮らしていました。経済的に余裕がないようには見えませんでしたが、オムツなどが足りませんでした。川久保さんが、タオルで体を拭い、背中をさすってあげると、お爺さんの険しい表情はみるみる和らいだそうです。 「好きで認知症になっている人はいません。一番不安でつらい思いをしているのはご本人です。同じ人として目と目を合わせて、その方の歩んできた人生に敬意を持ってお付き合いをしていると、必ずその方を理解できることにつながる発見があります。歳をとれば人は衰えることが自然で、誰もがなりうるのが認知症です。上手に表現ができなくなっていたとしても、認知症の方の行動は、その方にとっては常に意味のある行動なんです。心で接していれば、必ず寄り添えます」 認知症の方が心を開いてくれた瞬間に最大の喜びを感じます、と語る川久保さんの一言一言に、認知症の方を介護する家族も忘れてはいけない宝物が含まれていると感じました。認知症の人とも心は通じます〜介護ヘルパー20年 川久保佳津江さん「真


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