120号(2015年9月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年9月号です。


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【広告】6月に東京でハート・リング運動主催のフォーラム「認知症の新・常識」(ロッテ協賛)が開かれ、認知症の人との関わり方や咀嚼の意義など、他では聴けない味わい深いパネル討論が行われました。﹇ハート・リング運動フォーラムより﹈認知症を我が事として私たちは寄り添えるか町永 城戸さんは、義理のお母さんが認知症になり、その体験を『ほんわか介護』という本になさっています。介護体験のある方なら、「大変じゃないの?」と思うことでしょう。なんで「ほんわか」なんでしょう。城戸 実際には、大変ばかりでもないことが分かったんです。一つは、実の母を既に亡くしておりまして、あまり親孝行できないまま旅立たせてしまったという後悔がありました。それで「神様が親孝行のチャンスをくれた」と、張り切ってやることができました。もう一つ、ちょうど仕事で自信をなくしていた時で、私を頼ってくれることが嬉しくもありました。私は絵を描いているので、義母の記憶代わりに絵日記を書いて、その日に食べたものや出来事、そして「お義母さん、洗濯物畳んでくださってありがとう」というように、いっぱい褒め言葉やお礼を書きました。この絵日記帳を付けたことが、義母との信頼関係を築くことにつながったと思います。町永 イラストに描くことで、客観化できるというか、距離を置けるということは。城戸 あります。例えば、義母がゴミ箱の前で動きを止めていたことを思い出して、なぜだろう、捨てていいか迷っていたのかな、だったら貼り紙してみようとか、自分の行動や義母の行動を分析して反省することができました。大久保 認知症を知識として学んだのではなくて、本質を掴まえていると思います。私が歯科医師として認知症と本当に出合ったなと思い返すのは、施設に入ったばかりの80歳過ぎのお婆様の入れ歯が合わないから見に来てくれという依頼で行った時でした。見ると本当に合わない。「これは、あなたのですか」と尋ねたら、亡くなったご主人の物だと答えました。思わず皆が笑ったら、下を向いてボソっと「だってお爺ちゃんのだもん」と言ったので、ハっと気がついたのが、多分ご主人との思い出の中に生きているん(登壇者=右から、肩書は開催日時点でのもの)木之下徹氏 のぞみメモリークリニック院長大久保満男氏 日本歯科医師会会長城戸真亜子氏 洋画家コーディネーターの町永俊雄氏 福祉ジャーナリスト


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