120号(2015年9月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年9月号です。


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きがありません。必要度の低い医療行為を淘汰するとは限らず、必要度の高いものを切ってしまいかねない弱点もあります。ですから、総枠を抑制するのは得策でなく、当事者に近い所で一つひとつ検証すべきです。 実は検証の仕組みが全くないわけではありません。建前としては、費用負担者たる市町村(国民健康保険)や健保組合(被用者保険)など保険者が、行為の是非を検証し、不当なものを排除する役割を担うことになっています。 もう少し大きな視点に立つと、医療を受けるということは人生の目的そのものではなく、少しでも健康で有意義な人生を送るための手段です。 同じ「健康で有意義」を得るための手段が複数存在するなら、その費用対効果を同じ土俵に乗せて比較検討するべきで、医療を特別扱いする必健康づくりも役割丼勘定の弊害LOHASMEDICALVIEW指摘しました。 現在のところ、医療保険財政に投入されている国費を抑制しようと、国庫を預かっている財務省による総枠の締め付けだけが行われています。ただし、医療保険財政への国費投入は将来世代へのツケ回しなので、そもそもやめた方がよいのでないか、ということは前回も述べました。また、機械的な総枠の抑制には、前回ご紹介したような地域間格差や年代間格差を是正する働在の制度では、医療行為を行うか否かを、提供者と利用者(患者・家族)だけで決められます。医療行為の実施は、提供側にとっては売上であり、対する患者の費用負担には上限があり、どちらにも控えようというインセンティブが金銭的には働かないため、その行為が本当に必要だったのか、費用に見合う効果は得られたのか、という当たり前の検証が、ほとんどされていないことを、前回膨張を続ける医療費に対して各方面から改革を求められた厚生労働省は、保険者の責任を強めようとしています。然性は全くありません。健康が失われてしまってから対応する医療より、健康を維持する予防の方が高く評価されたとしても構わないはずです。 こんな発想も、医療提供者と医療利用者だけからは、なかなか出て来ませんので、費用負担者である保険者のイニシアチブが必要です。そして実は加入者の健康維持・増進への働きかけも、「保健事業」の名で、保険者が果たすべき役割として規定されています。 このように、保険者が果たすことになっている役割は極めて大きく、しかし現実には、ほとんど機能してきませんでした。 健保組合に多くの厚労省O Bが再就職しているという問題はさておくとしても、次項で説明しますが、ある保険者が単独で努力しても、他の保険者がズブズブを続けた場合には、そのツケが回ってくる第3回[集中連載]保険者の役割強化現26LOHASMEDICAL


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