ロハス・メディカルvol.121(2015年10月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年10月号です。


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■2008年段階 健康な20代男女に5分間、無味・無臭のガムを噛んでもらい、その直後に脳波を測定しながら音の刺激に応じてボタンを押すという作業を行ってもらいました。これを3回繰り返し、比較のため、ガム噛みの代わりに、①何もせずリラックス ②口に何も入れずに噛むのと同じ顎の運動 ③手指のタッピング、という条件でも同様の実験をしました。 すると、ガム噛みの際には、ボタンを押すまでの時間と刺激に反応する脳波が出るまでの時間が有意に短縮し、実験を繰り返すほど短縮しました。一方①の時には変化は見られず、②や③ではむしろ反応が遅くなり、実験を繰返すほど遅くなりました(図1)。 無味・無臭のガムを用いたのは「味」と「香り」による効果ではないことを証明するためです。また、②や③の時に、どんどん反応時間が遅くなったのは、単調でつまらない作業に被験者が飽きたため、と考えられました。■2015年段階 今度は、手に電極を取り付け、人差し指に刺激が来た時にはボタンを押す、小指に刺激が来た時には押さないという作業を6回、ガム噛みの場合とリラックスの場合とで行いました。 結果、ガム噛みの時には反応時間が早くなっただけでなく、その正確さが上がりました。リラックスした場合には、正確さがどんどん落ちました(図2)。※ 意識しないでも継続でき、その間に他のことを考えたり実行したりできる反復運動。大脳を使わず脳幹以下の神経回路だけで成立する。歩行が代表例。慣れた後の自転車乗りなどもリズム動作の一種。※ 大脳から独立して自動的に協調したリズム運動を起こすことのできる神経回路網や神経線維群。その運動によって起きる感覚刺激は脳に伝えられる。坂本助教たちの研究あごの運動の後作業回数作業回数(作業前)(回)(回)00-40-80401.02.00(作業前)0(作業前)011〜34〜6作業回数(回)1〜34〜62380120(MS)(%)01.02.0(%)指タッピングの後ガム噛みの後リラックスガム噛みの後ガム噛みの後リラックスリラックス[図1]反応速度の変化[図2]間違いの割合人差し指に刺激があったのに押さなかった。遅れた。小指に刺激があったのに押した。LOHASMEDICALVIEW自然科学研究機構生理学研究所特任助教坂本貴和子「食事をよく噛むことでも多分同じ効果はあると思いますけれど、食べられる量に限りがありますし、食べ過ぎて太っても困るので、ガムを有効に使ったらよいのではと思います」と話しています。3LOHASMEDICAL


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