ロハス・メディカルvol.121(2015年10月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年10月号です。


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も、本当に望ましい効果が得られるのかがはっきりしないからではないでしょうか。 ある対策が効果的かどうかを確かめる最善の方法は、採り上げた対策を一方の群(介入群)に施し、もう一方の群(対照群)には施さないで、両群の違いを調べることです。このような方法を用いて、ワーク・ライフ・バランスを高めるような職場での対策が労働者の睡眠にどのような効果があるか、米国で研究が行われました。 実施された対策は具体的には、①いつ、どのくらい働くか、また休暇をいつとるかをっすり眠りたいと、誰もが願っています。ところが、様々な事情によって、それはなかなか叶いません。働く世代では、仕事のせいでよく眠れないという声が多いはずです。 仕事は大事ですが、それ以外の生活も大切です。だからこそ、両者の調和をとること(ワーク・ライフ・バランス)が盛んに唱えられます。多くの人々がこの考え方に賛同はしながらも、社会的には充分に広まっていないように見えます。その理由の一つは、仕事と家庭との調和をどのようにとればよいか、仮にとれてそれほど大きな違いではありません。しかし、多くの労働者が睡眠を少しでも長くとれたことによって、職場全体では望ましい変化が生じたと言えます。 今回の対策は労働者の睡眠を直接には調整するものではありませんでした。であっても、良好な睡眠の方向に結果が動いたということは、働く世代では職場環境の改善によって快眠を得られる余地がかなりあることを示しています。 会社に「居る」ことが仕事をしている証拠で、しかも長く「居る」ことが熱心さの表れという見方はいまだ健在です。そのせいで、家族との時間や自分の私生活をも犠牲にし過ぎてしまっては、結局、何のために働いているのか、分からなくなります。 本当に問われなければならないのは、仕事の出来具合のはずです。それが良い睡眠にもつながれば、言うことはありません。第56回たかはし・まさや●1990年東京学芸大学教育学部卒業。以来、仕事のスケジュールと睡眠問題に関する研究に従事。2000年、米国ハーバード大学医学部留学。独立行政法人労働安全衛生総合研究所作業条件適応研究グループ・上席研究員高橋正也労働者自身で決められる度合いの拡大、②部下の仕事と家庭生活の調和を上手に支援できる上司になるための教育訓練、でした。これらの対策の背景には、働いた時間より、働いた成果を重視するという考え方がありました。 IT系の職場で働く労働者234名(平均47歳、女性は4割)は、こうした対策を延べ3カ月間にわたって受けました。その間、同じような特徴を持つ別の労働者240名は普段通りに過ごしました。 対策をとる前と1年後に、活動量を使って睡眠を客観的に検査したところ、介入群では対照群に比べて、睡眠が1日当たり8分長くなりました。しかも、睡眠が足りているという報告も増えることが分かりました。睡眠の質については差がありませんでした。 睡眠が1日当たり8分長くなれば、1週間当たりでは約1時間の延長になります。これは個人のレベルで見れば、ぐ22LOHASMEDICALVOICE


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