ロハス・メディカルvol.122(2015年11月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年11月号です。


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しています。 近年、ボディイメージとの関連性で問題になっているのが、摂食障害です。 米国の国立摂食障害協会によると、ボディイメージが否定的な人は、摂食障害発症のリスクが高まり、うつ病、孤独感、低い自尊心に苦しむ可能性も増えます。 日本でも厚労省のWEBサイトが、「マスコミや雑誌などでは、スリムになるための広告を毎日のように目にし」、「『やせを礼賛し、肥満を蔑視する』西欧化した現代社会の影響がうかがわれ」ると指摘、ここ10数年「きちんとした全国的な疫学調査がなされていないため、正確な実態のための調査が待たれます」としながらも、1980年からの20年間に摂食障害全体で患者数が約10倍に増加し、特に1990年代後半の5年間だけで拒食症は4倍、過食症は4・7倍と急増したことを報告しています。さらに「医療機関をすすんで訪れるのは一部であるため、実際はもっと多いと推定され」、「欧米並みになってきた印象」と書いています。ちなみに、拒食症は10代、過食症は20代が多く、推定発症年齢では10代の占める割合が年々増加し、若年発症の傾向を示していました。男女比は1対20とのことです。 ここ10年以上、日本では20代女性の痩せ過ぎが深刻で、国民健康栄養調査でも20%台でずっと推移してきました。これは男女合わせて成人では最も高い割合となっています。 こうした否定的ボディイメージについては長年、様々な研究が行われてきたのに対し、肯定的ボディイメージは近年までほとんど考慮されていませんでした。 米オハイオ州立大学のトレイシー・ティルカ博士たちは2005年、肯定的ボディイメージの評価スケールを開発しました。 このスケールによって評価すると、米国の女子大生では、肯定的ボディイメージは、自尊心や楽観性、積極性を高め、幸福感と関連していました。また、オーストラリアの女子大生では、肯定的ボディイメージが、日焼け止めを使用しての皮膚がん予防や、むやみなダイエットの減少といった行動改善につながりました。 ティルカ博士たちは今年発表した論文の中で、肯定的ボディイメージは、否定的とは無関係で連続性がない、との見解を示しました。 つまり否定的イメージはさておき、肯定的なボディイメージを持ち、尊重し、自賛し、感謝し、誇りに思うことが重要だというのです。 肯定的なボディイメージを持つ人は、①明確に真の自分の姿を認識し、②自分のありのままの姿を賞賛でき、また感謝し、③人としての価値や性質について身体的な外見で評価せず、④オンリーワンである自分自身の体を受け入れ、誇りを持ち、体重や食品、カロリーをむやみに気にすることなく、⑤自分の体を快適に感じ自信を持つことができる、とティルカ博士たちは説きます。 ここ数年、ソーシャルメディアの利用者は爆発的に広がり、国籍や年齢、性別などを問わず、多くの人の日常生活に浸透しています。今後、さらに否定的ボディイメージによる摂食障害の問題が広がる可能性もあります。だからこそ、私たちは肯定的イメージを自分の中に形作っていく必要があります。そうすれば自ずと、気に入っている部分はもちろん、そうでない部分も含めて、ありのままの自分の姿を受け入れ、肯定することができるようになります。そうして幸せを実感できるようになるんですね。LOHASMEDICALVIEW痩せ過ぎ日本女性自分を肯定する


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