ロハス・メディカルvol.122(2015年11月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年11月号です。


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月間にわたって受けました。一方、別な労働者36名(平均44歳、女性39%)は対照群として、その間を普段通りに過ごしました。 対策を実施する前と1年後に、両群の子ども(いずれも平均13歳、女性はほぼ半数)の睡眠を電話による聴き取りから調べました。その結果、介入群の子どもは対照群の子どもに比べて、寝付きが早くなり、睡眠時間のばらつきも小さくなりました。また、睡眠の質も維持されました。睡眠時間については、両群に差がありませんでした。 親が良い状態で働いているーク・ライフ・バランスを高めるための職場対策は、労働者の快眠につながることを前回ご紹介いたしました。それに続いて今回は、親が働きやすくなると、子どもの睡眠も良くなるという研究成果をお示しいたします。 実施された労働条件の改善は、前回説明の通り、①勤務や休暇のとり方を労働者自身で決められる裁量の拡大、②部下のワーク・ライフ・バランスを支援するための上司向け教育訓練でした。 IT系の職場で働く労働者57名(平均46歳、女性は49%)は介入群として、対策を3カ望ましい結果につながったのかもしれません。 ワーク・ライフ・バランスを高める対策は、家庭での親のあり方を変えたとも考えられます。何より親自身、睡眠を確保できるようになりました。それによって、精神的に安定した可能性があります。しかも、上司の配慮によって仕事と家庭との間で悩むことが少なくなると、自身のストレスも減ります。そうなると、ついイライラしがち場面でも、子どもに落ち着いて関われるようになります。これは、子どもにとってはポジティブな経験であり、良い眠りにつながる土台になります。 ご紹介した研究は、一つの職場の例であり、他の業種・職種でも当てはまるかは分かりません。子どもの睡眠を客観的には測っていない弱点もあります。とは言え、働きやすい職場には、親子の睡眠を良好にするという一石二鳥の効果が期待できるでしょう。第57回たかはし・まさや●1990年東京学芸大学教育学部卒業。以来、仕事のスケジュールと睡眠問題に関する研究に従事。2000年、米国ハーバード大学医学部留学。独立行政法人労働安全衛生総合研究所作業条件適応研究グループ・上席研究員高橋正也と、子どもに望ましい影響があることは、これまでも示されてはきました。ただし、今回の研究のように、労働条件を実際に変えた群と変えなかった群とを比べた上で、親の働きやすさが子どもの快眠につながることを実証した価値は、極めて高いと言えます。 この研究での対策は労働者(=親)のためのものであって、子どもの睡眠改善をめざしたわけではありませんでした。それなのに、なぜそうなったのでしょうか。 同じ研究チームの調査によれば、介入群では子どもと過ごす時間が平均で1日39分長くなりました。それに対して、対照群では24分短くなりました。親子で過ごす時間の意味は子どもの発達段階によって変わります。小中学生の場合は特に親からの目配りや躾がなくてはなりません。親子一緒の時間が増えることで、学校、食事、起床・就寝など子供の生活時間がよく管理され、ワLOHASMEDICALVOICE


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