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第26回 まず、調剤薬局が規制改革会議のターゲットとなった原因は、患者さんや社会から見て、「ありがたみ」があまり感じられていないことです。要するに、厚労省は医薬分業を強力に推し進めてきましたが、それに対して国民が払ったコスト分の価値は、残念ながらあまり生まれなかったのです。 なぜ、こんなことになったのでしょうか。 そもそも歴史を振り返れば、国策として医薬分業が推進されるようになるまで、患者さんは病院や診療所から直接薬を買うのが一般的でした。と 規制改革会議が問題提起したことから、これまで病院との間に公道やフェンスなどで敷居を設けねばならなかった調剤薬局が、来年度にも病院敷地内で開設することを認められることになりそうです。 今回の規制緩和は、患者の利便性の観点で一歩前進と言えるでしょう。一方で、もっと便利な院内での開設は、厚生労働省が「薬局の独立性が脅かされる」と強く抵抗し、見送られることになりました。 この問題は、色々な意味で興味深いと考えています。ころが、薬の仕入れ値と販売価格との間に差があり、その薬価差益を狙った一部の医療機関で過剰な投薬が行われ、〝薬漬け医療〟として社会問題化しました。 これを排除するには、医療機関が薬価差益を得られない仕組みに変更する必要があるということで推進されたのが、医薬分業です。 これを実現するための変革には強い力が必要で、それが調剤薬局に報酬を厚く積む誘導だったわけです。 ただし、この方策によって、患者さんが不便になること、社会の支払うコストが増えることについて、厚労省は軽く見積もり過ぎていたのかもしれません。そしてついに、社会の側の我慢の限界が来た、ということなのだと思います。 院内での薬局開設を認めてしまったら、これまでの方策が時間とお金のムダだったと総括せざるうめむら・さとし●内科医。前参院議員、元厚生労働大臣政務官。1975年、大阪府堺市生まれ。2001年、大阪大学医学部卒業。規制改革会議の問題提起をきっかけに、調剤薬局のあり方に注目が集まっています。厚労省は「門前薬局」を減らして、「かかりつけ薬局」を増やそうとしていますが、私は、現実には機能しないと思います。門前から、かかりつけへ薬局の方向は正しいか医薬分業の意義はかかりつけは難しいLOHASMEDICALVIEWを得なくなり、それだけは避けたくて厚労省は必死に抵抗したのでしょう。 調剤薬局があまり価値を生んでいないという批判に対応すべく、厚労省は次の診療報酬改定で、特定医療機関の処方箋の割合が大きい「門前薬局」の報酬を引き下げ、複数の医療機関から患者に出される薬を1人分丸ごと管理する「かかりつけ薬局」の報酬を引き上げる方針だそうです。 そうすることによって、薬の飲み合わせや重複が管理できるのだ、とか。