ロハス・メディカルvol.122(2015年11月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年11月号です。


>> P.23

複数の医療機関から似た効能の薬が処方されていたとして、薬局は複数の医療機関に対して、処方の理由を尋ねたうえで、ダブっていた場合、そのうちどこかの医療機関に対して「この処方箋には薬を出せません」と宣言するという非常に煩雑なことをしないと重複投与の調節をできません。非現実的なことはお分かりいただけると思いますし、調整できたとしても、その処方箋を別の薬局へ持って行かれたら、それまでです。そのような調整は本来、「かかりつけ医」がやるべきことなのです。病名を知らない、そして処方権を有していない薬局にその機能を持たせることには無理があります。 病院や診療所の近くの薬局なら安くて確実にもらえるのに、「かかりつけ薬局」に行ったら高くて違う薬になってしまうかもしれない(あるいは在庫がなくて薬がもらえない)。時間も恐らく余計にか しかし私が考えるに、これは、うまくいかない可能性が高いでしょう。 前提として、報酬が上がれば、患者さんの負担は増えることを押さえておく必要があります。また特定医療機関の処方箋だけに対応するのと比べて、「かかりつけ薬局」は薬の品揃えがこれまで以上に多く必要です。よほど上手にやらないと、「処方箋に記載されている薬A、薬B、薬Cのうち、薬Aは出せますが、薬B、薬Cはうちでは出せません」ということが頻発します。調剤薬局が横に大きな土地を購入して、巨大な在庫用の倉庫を建てられるのなら可能かもしれませんが⁝⁝。 また、処方箋には病名が載っていません。そして調剤薬局の薬剤師さんは医療機関のカルテを見る機会がありません。ですので、現在の調剤薬局は処方箋の記載内容から、患者さんの病名を「推測」して薬を調剤しているのです。かる。それでもなお、かかりつけ薬局を患者が選ぶ、と厚労省が考える根拠は一体何なのでしょうか。  私が考えるに、うまくいかないであろう方針に厚労省が固執するのは、自由にさせると「薬」が「医」に隷属してしまうので、距離を置かせる必要がある、という発想があるためです。 たしかに、かつてのような零細経営の薬局では、「医」に隷属するしかなかったかもしれません。しかし、医薬分業を推進してきた結果、調剤薬局は上場の大規模チェーン数社に集約されつつあります。単体で見れば、経営規模は「医」を凌駕しています。 ここからは、むしろ、その組織力活用を前提に、意味のある医薬分業へと舵を切るべきではないでしょうか。 つまり、医療機関(特に病院)内に調剤薬局の開設を認めるべきだと思います。形式的には「医薬分業」が保たれ、実質的には「院内調剤」になるからです。これで患者さんの利便性は格段に向上します。 また、それによって医療機関は、薬の在庫を持たなくて済むようになり、薬剤師を自前で雇用する必要もなくなるので、経営が身軽になります。さらに調剤薬局に勤務する薬剤師の方にすれば入院医療も外来医療も両方見ることができて(カルテを見ることもできて)、資質の向上につながります。 患者さん側から見ると、入院中も退院後も一貫した服薬指導・管理を受けることが可能になります。チェーン薬局本部で一元的な服薬状況の管理も可能となるかもしれません。 意味のある医薬分業を進め、それが患者さんの利益につながるようにするためには、厚労省がほんの少し、プライドを捨てればよいだけの話です。本当の医薬分業とはLOHASMEDICALVIEW


<< | < | > | >>