ロハス・メディカルvol.123(2015年12月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年12月号です。


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 いわゆる風邪薬(総合感冒薬)は、風邪の典型的な諸症状を和らげる複数成分を配合してあるもので、ウイルスを殺して治す能力はありません。不快感を減らして安眠を促し、体力の回復を助け、自身の免疫力がウイルスに打ち勝つのを手伝うものなのです。 なので、風邪薬を飲んだら不快感が減ったから無理しても大丈夫、というような使い方は、根本的に間違っています。風邪で怖いのは、無理をして免疫が弱ってしまった後で、別の外敵に侵略を許すこと。そういう大事件が起きてしまったら、後悔先に立たず、です。 湯冷めをすると、喉などの繊毛の動きが鈍り、ウイルスを排除する能力も落ちてしまいます。感染しやすくなり、また免疫細胞の活性も下がっているので、ウイルスにやられやすいと考えられます。 これと同じ理由で、日本では寒くて乾燥している冬に、風邪やインフルエンザが特に流行します。 細菌が自ら増殖する能力を持つ生命体なのに対して、ウイルスは感染した細胞(宿主と呼びます)の増殖機能を乗っ取って増殖するものです。 ですから細菌とウイルスは大きさも全然違います。人間を地球の大きさにたとえると、細菌は小型バスやヘリコプター、ウイルスはネズミくらいの大きさです。 免疫細胞は、乗っ取られた自らの細胞を殺すこともあり、それが症状の原因の一つだったりします。薬では治らない湯冷めで風邪をひく理由菌とウイルスは違うLOHASMEDICALVIEW温上昇が免疫の働きを増強するのなら、入浴すると体が温まってよさそうです。なぜいけないと言われてきたのでしょうか。 「無理に外から温めても、体にはかえって負担になるでしょう」と言うのは、早稲田大学の永島計教授です。 私たちの体は、外界の変化に対し、できるだけ内部の状態を一定に保とうと調節するように出来ています(恒常性=ホメオスタシス)。お風呂で外から温め続けている間、体は内部の温度(深部体温)を維持しようとエネルギーをたくさん消費して頑張りますから、体の内外の温度差が大無理に温めると消耗し湯冷めする体きいほど余計に消耗してしまうのです。 さらに、お風呂に入ると湯冷めの危険があります。永島教授によれば、「入浴後しばらく、体は温度を下げようとします。温かくしないと、体表付近の温度が下がり過ぎます」(図参照)とのこと。結局は体が冷えてしまって逆効果というわけです。 昔は家にお風呂がなく銭湯に通うのが普通だったり、あっても家自体の気密性が低くて冬寒かったりして、湯冷めしやすかったので、風邪の時に入浴を避けるのは理にかなっていたんですね。4


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